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同友会は、中小企業の繁栄と、そこで働く全ての人の幸せを願い、地域社会の発展のために活動しています。

経営指針社員と共に(スリーシー 代表取締役 渡邊博子氏(京都同友会))

2019年02月15日

 当社は、2007年に設立した不動産業を営む会社です。12年に同友会に入会し、すぐに人を生かす経営実践道場に入りました。ここでは半年間かけて経営指針を成文化します。教えてもらえると思っていた私は、始めは助言者の質問に苦しみましたが、ここで本当の意味で自分と自社と向き合い始めることができました。

 

 道場が後半に入り、自社や今の社会がどうなっているのかと考えたとき、自社の現状も今の社会も「理想と現実のギャップ」があることに気が付きました。ここで当社の「私たちは未来を担う子ども達のために美しい背中を創り続けます」という、最初の理念のベースとなる考えが生まれました。シングルマザーが行政に頼らず自立することを目的に彼女らの雇用も始めました。

 

 道場が修了し、経営指針書を発表しました。それによって自社広報紙の「3C新聞」で役立つ地域情報を発信したり、業務マニュアルを作って、子どもに何があっても安心な休みやすい体制づくりに社員が率先して取り組んでくれました。当初は使命感に燃えて「私がシングルマザーを助けている」と思っていましたが、気付くと助けられているのは私の方で、社員の思いやりや優しさが当社の強みになり、社風となっていました。

 

 私は同友会に入会してから全国行事には必ず参加するようにしています。あるとき、当時中同協経営労働委員長だった中山英敬氏(ヒューマンライフ代表取締役)から「企業変革支援プログラム(以下、支援P)を使っていますか」と問われたことを発端に本格的に支援Pに取り組み始めました。

 

 当社では社員全員にSTEP1と2を1冊ずつ持ってもらっています。支援PはSTEP1で自社の現状を採点するところから始まりますが、いいところは自分と社員との点数の差が見えてくることです。特に自分は高く、社員は低い点数のときに課題が明確になります。

 

 当社では「顧客の満足度の把握」で点数の差がありました。私自身は直接お客様の感謝の声を聞いていましたが、あまりお客様と接することのない社員にはその声は届いておらず、反対にクレームばかりを私から聞かされていることに気が付くことができました。その反省から現在は社内ミーティング等でどちらも伝えるようにしています。

 

 経理公開についても私と社員に認識の差がありました。ただオープンにするだけでなく分かるように説明し、今後会社をどうしていきたいのかも話しました。社員も家に帰れば家計簿を付けお金を管理していますから、自主的に節約するなど貪欲に取り組む姿勢も見えてきました。

 

 さらに売り上げを伸ばすために「暮らしのお助け隊」というのを考えてくれました。掃除や家事手伝いなど自分たちが得意としていることを会社に生かしてくれています。支援PはSTEP1で課題が明確になり、STEP2に改善の方法が必ず書いてあります。ぜひまだ取り組んでいない方には、STEP1と2合わせて取り組んでいただきたいと思います。

 

 10年ビジョンも共有し、全社一丸の体制ができてきたと思っていた矢先、ある社員から退職願が出ました。私が地域の役を任せていただいたことで会社を離れる時間も増え、信じて任せていたことはいつしか放任と捉えられていました。「社長は自分ばかり偉くなり会社を見ていない」と思われていました。

 

 その時、私はなによりも会社を大事にするために1つの決断をします。社員と共に一から経営指針書を作り直しました。「私たちは何屋なのか」事業ドメインから話し合いました。「癒し空間を創造する」という新しい理念は彼女たちが中心になり作ってくれました。指針実践の第一歩として、事務所に地域の人に来てもらえるようカフェスペースを新設しました。まだまだ課題は山積していますが、地域を大家族にという夢に向かって一歩一歩着実に進んでいきます。

 

 (とかち道研第1分科会より)