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同友会は、中小企業の繁栄と、そこで働く全ての人の幸せを願い、地域社会の発展のために活動しています。

【同友会大学講演】北海道大学名誉教授 間宮正幸氏

2018年09月14日

中小企業は人が成長する拠点

聴く姿勢で共感的理解を

 

 中小企業家同友会は、経営の実際にとどまらず「人間と教育」の研究を一貫して高く位置付け、「共育」という提案をしてきたことはすごいことです。

 

 「教育」という営みは、江戸時代まではむしろ「養生」と言っていました。語源をさかのぼると、教育とは本来、ラテン語のエデュカレ(educare)に由来する「養い育てる」ことに重点が置かれていました。人間の成長において、共同こそが大事な営みであり、人間同士の共感的理解を大切にして、相手の身になって「聴く」という姿勢が根本にあるのです。

 

 働く人々の7割が集う中小企業は、人間的成長の拠点的な場であり、そこでの「共育力」が心底値打ちを持っていると言えます。職場には人生の成長のモデルがいて、仲間がいます。自己を認めてもらい、潜在する能力が引き出され、生活の糧が得られる場です。

 

 若い人をこうした働く場に誘うことは、人間として最も価値ある活動に参加してもらうことなのです。人間は、労働を通してこそ他者を知り、主体的に成長することができるのです。

 

 ■「聴く」という社風を

 

 職場は人間的成長の場でなければならず、その根本原理は「支え合う・つながる」ことであり、「共育」の場であるのです。共に働く仲間として、同僚の声を聴くことを大切にして、自己教育としての「養生」に注目してほしいのです。

 

 団塊世代の大量退職などで、あらゆる職場で継承という課題が深刻になっています。技術、技能はもとより、職場組織の在り方にも改革と継承の課題が提起されています。

 

 そこで大事なことは、コミュニケーションです。この言葉の語源は、ラテン語のコムニカレ(communicare)で「交わり、共有しあう」「共通のものをつくりだす」ことです。職場の中で「生き方や働くことの価値・目的」を持った議論ができ「聴くという社風をつくる」ことがとても大切だと思います。

 

 ■人間心理の真実とは

 

 心の形成過程の根本は、見つめられ、受け止められ、承認されることにあるといってもよいのです。承認とは英語でrecognition、繰り返し認められるということです。温かい感情が流れ、その結果自己成長の意欲や理性が湧いてくるのです。したがって「聴く」とは、ホールディング(holding、抱えること)の具体的な姿だといえます。互いに感情レベルで調律し、まずは応答することです。

 

 これは人間心理の真実であり、カウンセリング・マインドの原点です。人は、聴かれることによって自己の感覚が安定的に育ち、仕事のやりがいや生きる意義を感じます。そして、考える力が湧き、人間の大きさや深さ、品格を育てることにつながるのです。

 

 「聴く」関係が成立するためには、生き方や働くことの価値・目的を議論できる社風が前提になり、こうした関係づくりが人を育てるのです。

 

 育むことこそエデュケーション(education)なのであり、まさに、同友会の「共育」が教育学界からも注目されているのです。

 

 (7月12日第66期同友会大学第27講での講演から)