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【1世紀企業45】二世古酒造(倶知安町)

2018年09月14日

高い品質地元米で醸す酒 「忍と断」引き継いでいく」

 

 道内の酒蔵が徐々に姿を消していく中、ひたむきに日本酒を造り続けてきた二世古酒造。製造や販売方法を見直し、量から質へと転換を図りながら歴史を紡いできました。

 

 同社は、1916(大正5)年に他社が倶知安町で創業した酒蔵がルーツ。前経営者が高齢化し後継者もいなかったことから、72(昭和47)年に水口家が引き継ぎました。酒造りは素人でしたが、酒造メーカーは利益が大きいと見込み、現在社長を務める汪さん、父の湊さん、弟の清さんの3人で始めます。同時に社名を二世古酒造と改めます。

 

 しかし、船出は厳しいものでした。「値段は安いが、味は良くない」というイメージが定着し、酒卸や小売店は少量しか取り扱ってくれません。起業から2年ほどで倒産の危機が迫ります。

 

 そこで、製造、販売の両面で転換を図ります。他社と同じく、味を調えるために水あめや醸造用アルコールなどを混ぜて酒を造っていましたが、これをやめます。こうじ、酵母で造ることにこだわり、できあがった酒は「おいしい」と評価され始めます。

 

 販売では卸、小売りの免許も持っていたことから、消費者に直接販売する方法に切り替えます。試飲用の一合瓶を持って倶知安、京極町などの農家を訪問。一升瓶10本入りのケースが4、5箱という単位で売れ、商売はやっと軌道に乗ります。

 

 時期をほぼ同じくして、居酒屋チェーン「つぼ八」に酒を販売し始めます。同社の創業を支援した縁があり、ピーク時には生産量の3―4割を納め、経営の安定化につながりました。

 

 今では珍しくなくなった道産米を使った酒造りには、20年以上前から取り組んできました。今では道産米のみを使用。羊蹄山麓の生産者個々に作付けを依頼し、玄米全体量の6割まで地元産酒造好適米が増加しています。

 

 新酒鑑評会で金賞を受賞するなど高い品質は各方面の目に留まり、現在は特約店への販売が中心。本年度は地元酒造好適米を使った商品で初めて賞に輝きました。

 

 また、昨今は日本酒の魅力が見直され、輸出も増えている一方、市場は縮小傾向にあるため、8年ほど前から米焼酎を製造しています。珈琲焼酎を代表格に経営の柱の一本に育っています。

 

 長年酒造りを担ってきた汪さんに代わり、長男の渉さんが杜氏を務めるなど、バトンは引き継がれつつあります。汪さんは、今後も日本酒業界が大きく伸びることはないとみた上で「忍と断という考えを大切にしてきました。耐えるところは耐え、決断すべき時は決断するという意味。特に小さな会社では必要だと思います。息子にもこの言葉を贈りたいですね」と語り、その手腕に期待しています。