経営理念活かし業態転換 (株)パンセ代表取締役 宮城同友会相談役 菊地肇氏
2018年06月15日
札幌支部が4月27日に開催した第33回定時総会で、宮城同友会相談役を務めるパンセ代表取締役の菊地肇氏が記念講演し、業態転換による、東北№1ベーカリーへの軌跡を語りました。講演要旨を紹介します。
■脱サラしてパン屋へ
当社は郊外型路面店を中心にベーカリー11店舗、ほかに洋菓子とカフェを各1店舗展開しています。1989年7月14日、脱サラした私が40歳の時、仲間と3人でパンの宅配事業を創業しました。
翌年、「インストアベーカリーを2店舗引き受けてもらえないか」という話がありました。私は自分でパンを作ることはできないので悩みましたが、居抜きで良いとのことでしたので引き受けました。その後もさまざまなスーパーから声を掛けられ、2000年には18店舗にまでなりました。
■同友会と私
同友会への入会は93年11月でした。入会翌年に第4期経営指針を創る会を修了し、理念を成文化しました。成文化した経営理念は「一.私たちは食文化向上の担い手としておいしさ、新鮮、健康を提供し社会に貢献します」「一.私たちは清潔で明るく働きがいのある会社を目指します」「一.私たちは常にお客様を大切にしプロ集団として技術の研鑚に努めます」です。
■業態転換のきっかけ
04年4月に経営労働委員長を引き受け、初めて担当したのが第15期経営指針を創る会でした。全6講の1、2講目が経営理念の成文化でしたが、3講目が終わっても理念の作成が進みません。そこで、受講生には理念作成の前に10年ビジョンを考えてもらうことにし、次回までの宿題としました。
その時、私自身も自社の10年後について考えました。当時、加速度的にスーパーが出店し、競争が激化していました。当店の客数、売り上げも年々減少し、果たして10年後に我が社は存続しているのかという危機感がありました。
どうにか打開策をと悩み、業界紙を読んでいた時、見つけたのが関東圏の郊外型路面店ベーカリーの記事でした。
早速、幹部社員2人を連れて、繁盛店視察へ。東京、千葉、茨城、神奈川の約10店舗を訪れ、驚きました。お客様の行列ができているのです。店内には焼き立てのパンが隙間なくぎっしりと並び、従業員は嬉々として働いていました。「我が社もこんな店にできないものか」。視察から戻り、1週間後の店長会議で私は「今後は自社の運命を他者に委ねるようなインストア店から、独立した郊外型路面店に業態転換していく」と宣言しました。
■新しい“パンセ”へ
05年6月19日、郊外型路面店1号店を仙台市泉区南中山に開店し、そして05年2月から約3年間でインストアベーカリーを全店撤退しました。この間に郊外型路面店を5店開店し、宅配事業を譲渡。社名をフランス語で「気高い」「崇高な」という意味のパンセに変更しました。怒涛(どとう)の3年間で本当に大変でした。
思い返してみると、経営理念作成当時の我が社は理念とは程遠い状態で、理念の存在自体がとても重く大きな負担でした。しかし、業態転換という大きな決断ができたのは、経営理念に沿った会社にしたいと思えたからです。この決断があったから、今のパンセがあるのです。パンセは地域のお客様に支えられ、創業30年になります。パンセの名に恥じない仕事をしていくことをお約束します。
(4月27日札幌支部第33回定時総会記念講演)