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会員企業の2018年度経営戦略 その2

2018年03月15日

【その1はこちら】

 


ICTで人材育成

建設業 砂子組(奈井江町)

 当社は1946年に室蘭市で創業し、一般土木請負業を開始しました。その後、奈井江町に拠点を移し、62年に株式会社砂子組を設立しました。

 

 私が社長に就任したのが94年で、それ以降は人材育成を企業運営の軸に据えました。当初は建設業というと、どうしても閉鎖的なイメージが強く、若い世代から敬遠され、採用の面では苦労しました。

 

 9年前からICTを現場に取り入れ、情報化施工に取り組んでいます。従来の2次元化から、ドローンなどを駆使してあらゆる設計・施工計画を3次元化するICT技術の全面的な活用です。導入に伴う費用の課題はありましたが、従来一人前の技術者になるのに10年かかっていた人材育成が、ICTを導入することでその半分の期間で済みます。将来を見据えると効果的な投資だと考えました。

 

 2年前には営業部を「企画営業部」に組織変更し、その中に「ICT施工推進室」を新設しました。推進室には土木技術者や女性職員が在籍し、ICT施工に関する準備を専門的に行うことで現場のバックアップ体制を強化し、スムーズな対応を実現しました。

 

 ICT土木工事全国初の現場となった道央圏連絡道路千歳市泉郷改良工事では、約40回の見学会が開催され、800人ほどが来場しました。現場の職員は、その対応のために勉強することで成長できたと感じています。また、現場見学会に参加した学生が「自分もICT施工がやりたい」と当社へ入社希望する効果もあり、2年連続で技術者を9人ずつ新入社員に迎えています。

 

 今年2月15日には、建設現場の生産性向上を進める特に優れた取り組みとして、国土交通省より『i―Construction大賞』の国土交通大臣賞を授与されました。大変光栄なことですが、受賞が最終到達点だとは思っておりません。

 

 今日、人手不足の問題は深刻な状況となっています。ICTを活用することで建設業のイメージを明るくし、活用の効果を他の建設業者にも理解してもらいたいと思います。そうしたことで、建設業で働きたいと思う若い人たちを増やしていくことこそが、最終到達点だと考えております。

 


勤務時間をルール化

飲食店 ブレンドワークス(札幌市)

 当社は2005年に創業し、ススキノでジンギスカン専門店「夜空のジンギスカン」を4店舗運営しています。従業員はパートを含め45人です。

 

 私はいくつかの転職を経て創業した経験から、経営指針を文書ではなく漫画にして分かりやすく伝えています。基本的な理念を共有し、社員の力を信じることです。そうすることで「自分のお店」として魅力ある店舗をつくってもらえると思います。そのための下地作りが働き方改革だと思います。

 

 当社の採用基準は①応募者のライフスタイルに当社の働き方がマッチしているか②今いる社員とマッチングできそうか③会社の価値観を共有できそうな人―の3点です。採用は働きやすい職場づくりの第一歩です。

 

 当社の4店舗は全てススキノの100㍍範囲内にあります。4店舗間でお客様を呼び込む競争が起きますが、魅力的な店舗をつくるために切磋琢磨することで従業員が成長しています。また、自店が満席でも他の3店舗にお客様を誘導できることで、お客様の満足感や社員の連帯にもつながっています。

 

 飲食店での勤務は厨房とホールの閉じられた空間なので、気晴らしの場もさほどありません。そのような環境で長時間勤務すれば、徐々に公私混同が始まりかねません。当店の営業時間は午後5時から深夜1時までですが、午後4時に出勤し、閉店後は速やかに帰宅することをルール化することで8時間労働体制となっています。勤務時間を守ることで仕事に集中できるようになり、休日の取り方も極力ルーティンベースにすることで仕事の効率化とリズムを崩さないようにしていています。

 

 また、店長など役職者が自主残業や休日出勤などで頑張りすぎることを称賛しないことを常に伝えています。

 

 店長からは「1日の労働時間、月公休が守られている会社。働く制度がしっかりしていることで、負担なく毎日仕事に向き合える」と受け止めてもらっています。今後は、当面の目標として現在の4週6・5休から4週7休を目指すとともに、子育て世代への手当てを拡充していきたいと思います。

 


職員の自主性を育む

福祉 静苑ホーム(江別市)

 当社は1973年に社会福祉法人北海道友愛福祉会が設立し、同年、特別養護老人ホーム静苑ホームとして事業を開始しました。現在は、全国初の個室風多床室の設置など多様なニーズに応じたサービスの向上に努めています。

 

 この業界はニーズが高まっていく一方ですが、人材は厳しい状況です。当社では「和顔愛語」を行動理念に掲げています。この行動理念は職員に宿るものであり、所作に表れるものだと考えているので、理念の一番の体現者である職員が自ら考え、自ら成長する仕組みをつくることが、職員、利用者、ひいては地域が生き生きと輝くことにつながっていきます。

 

 その仕組みの一つとして、現場職員の自発的なアイデアを積極的に支援しています。本年度は最先端ICT技術を活用したミスト入浴機や、全自動体位交換機などを導入しました。業務改善と利用者サービスの向上は一体です。どちらも成してこそ意味があります。そういった考えがしっかりと職員に伝わり、自発的にアイデアを出していく環境が育っています。

 

 また、ワークライフバランスの取り組みとして、働きたい部署を自分で選んで異動にチャレンジできる「社内FA制度」があります。出産や育児などの状況や自分の夢に合わせた働き方ができるような仕組みです。これに加え、昨年10月より奨学金返済支援手当を導入し、どんな状況でも働きやすい、活躍しやすい職場環境を整えています。いずれも職員のアイデアから採用されたものです。これらの取り組みのおかげか、当社では過去5年の職員定着率が97%となり、毎年10人ほどの新卒採用を行えるまでになりました。

 

 来年度で当社は45周年を迎えます。より多様な人材が活躍できる環境を目指して、「福祉人材ビジョン(仮称)」を打ち出し、子どもからお年寄りまで活躍できるよう取り組んでいきます。