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同友会は、中小企業の繁栄と、そこで働く全ての人の幸せを願い、地域社会の発展のために活動しています。

中小企業と地域支える金融とは 日本動産鑑定会長 森俊彦氏

2018年07月15日

6月19日に開催された、北海道中小企業家同友会「中小企業憲章制定8周年記念セミナー」で、特定非営利活動法人日本動産鑑定の森俊彦会長が「中小企業と地域を支える金融とは」と題し講演しました。講演要旨を紹介します。

 

※パネルディスカッションの模様はこちら

 


 

一心同体で地域活性化

 

 中小企業は、事業リスクを取って果敢に挑戦を続け、日本経済をけん引しています。一方、金融機関は、担保・保証ではその事業リスクを減少させることはできないが、中小企業に寄り添って事業を理解し融資や本業支援をすることで、事業リスクを減少させることができる。地域活性化において両者は一心同体です。

 

 事業再生や業績改善、事業承継がなかなか進まない根本に、中小企業経営者と金融機関との間に信頼関係が十分に構築されていない問題があります。中小企業経営者は中小会計要領に準拠した財務情報で信頼性を確保すると同時に、経済産業省が普及を図っているローカルベンチマークの活用によって経営理念や商流、知的財産などの非財務情報を見える化し、バイヤーや金融機関に見せる化することが肝要です。

 

 一方、金融機関は、企業支援の実態を示す、金融庁のベンチマークを積極的かつ具体的に開示し、平時から互いに信頼関係を築くことが共通価値の創造、地域経済の持続的成長に結実するのです。

 

不良債権処理から共通価値の創造へフェーズ転換

 

 金融庁の金融行政方針において、担保・保証に依存する融資姿勢を改め、取引先企業の事業内容や成長可能性等を適切に評価し、融資や本業支援を通じて地方創生に貢献していくこととされ、また、国の未来投資戦略ではローカル・アベノミクスの金融面の主役は地域金融機関とされています。

 

 しかし実態は、多くの金融機関は特に中小企業に対し、運転資金に対してまで長期融資を行っており、モニタリング力が低下し、かつ必要以上の約定弁済の結果、中小企業の資金繰り困難化をもたらしています。バブル崩壊後、大量の不良債権を処理するために金融検査マニュアルができましたが、現在は不良債権がほとんどなくなり、フェーズ転換の時との認識が不可欠です。

 

 金融庁の調査によると、106ある地域銀行のうち半分が、バランスシートの健全性に問題がないものの貸出利鞘が縮小し、貸出や手数料ビジネスといった本業で赤字になっています。地元の中小企業が疲弊して廃業していけば、地域金融機関も成り立ちません。中小企業の成長によってこそ金融機関が成長するという、共通価値を創造する時代に入っているのです。

 

短期融資が1つの手法

 

 こうした中、事業性を評価し、資金繰り難の解消や事業再生、経営者保証の解除などに取り組む金融機関が増えつつあります。顧客本位と、自己本位の金融機関の差が付いてきており、その差を見極める必要があります。

 

 顧客本意の金融機関を選択するポイントは、経営者保証ガイドラインを活用しているか、信用保証制度のフリーライダーになっていないかなど幾つかありますが、特に重要なのは運転資金が短期継続融資の専用当座貸越であるかどうかです。

 

 当座貸越は、約定弁済が無いのに加え、借入・返済は自由で商品の仕入・販売・現金化と結びついているため、金融機関は中小企業がどのような事業状態にあるのか手に取るように分かります。例えば、売れ残っている商品があっても、早い時期にビジネスマッチングして高く売り抜けることも可能です。こうして業績改善すれば、経営者保証もいらなくなるでしょう。

 

 互いにウィンウィンで地域活性化。まさに共通価値創造の実現です。そのためには中小企業経営者の皆さん、金融機関、中小企業診断士など総力の結集が必要なのです。