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【69号特集4】コロナ禍で光る同友会の値打ち  ―孤独な経営者をなくすという使命を継いで―

2021年01月15日

コロナ禍で光る同友会の値打ち
―孤独な経営者をなくすという使命を継いで―

 

(株)ナリテツ 代表取締役 成澤 則充(厚岸)

 

 新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い、多くの中小企業は売り上げの減少などに悩み、大きな混乱の中で自社の生きる道を模索しています。その一連の対応の中で発見した「同友会の値打ち」を、くしろ支部の新任幹事長が報告します。

 

 

 


 

 私は釧路の東にある厚岸町で、ナリテツという鉄骨製造の会社を営んでいます。大学卒業後、当社の前身となる成澤鉄工に入社し、2010年に先代から事業を引き継ぎました。別会社でリーフレタスの水耕栽培を行うスターファームという会社も経営しています。


 くしろ支部では、昨年まで組織委員長を務めていましたが、今年から幹事長という大役を仰せつかることになりました。


 今回は、新任幹事長が感じた、コロナ禍での同友会の値打ちについてお話します。

 

地域の現状

 

 厚岸町は、漁業と農業の一次産業が主体の人口9千人の町です。厚岸といえば「カキ」というイメージを持っている方も多いかもしれません。「カキえもん」をはじめとする「えもんシリーズ」でブランド化を図っています。


 内陸部では農業が盛んです。ほとんどが酪農業で、のどかな牧草地が広がっています。わが社でも漁港や、農業用施設向けの鉄骨製造を行っています。


 2016年にはウイスキー蒸溜所ができ、今年ついに「厚岸ウイスキーSARORUNKAMUY」が初出荷されました。


 くしろ支部は釧路・根室管内が対象地域ですが、この地域の主要産業も、やはり漁業と農業です。面積は、福島県や長野県とほぼ同じ約1万4千平方㎞で、域内の人口は31万人。会員数は、2020年7月末時点で704名。会員組織率は14・4%です。


 中小企業振興基本条例制定運動が盛んな地域で、18ある自治体のうち、釧路市や別海町など8カ所で条例が制定済みです。来春には浜中町でも制定される見込みとなっています。しかし、釧路・根室管内の人口減少は急激に進んでおり、年間約4千人ずつ減っています。

 

コロナ禍での対応

 

 新型コロナウィルスの日本国内での感染拡大は、まず北海道で起こりました。


 2月22日には釧路・根室管内初の感染者が確認されました。それを受けて緊急の二役会を持ち、感染拡大防止のために支部内の行事を延期または中止するよう各組織に要請しました。行政や各種団体が出している感染防止対策や支援策に関する情報をまとめ、ホームページなどで閲覧できるようにしました。その内容は随時更新しながら、メールやFAX、SNSなどでも定期的に配信しました。


 2月27日からは事務局による会員企業への電話ヒアリングを開始します。


 飲食店会員の苦境が明らかになると、釧路市ビジネスサポートセンターk-Bizと連携し、飲食店のテイクアウト情報を掲載するサイトを立ち上げました。同様の取り組みはその後全国に広がりましたが、おそらく、くしろ支部が一番早かったのではないかと思います。


 北海道同友会としても、北海道経済産業局と北海道労働局の担当者を招き、コロナ対応施策に関するWebセミナーを行いました。しかし、オンラインセミナーに慣れていなかったせいもあってか、行政の立場から語られる制度の説明では、どうもピンときません。


 そこで、制度の説明について会員専門家に協力を呼び掛けると、数名の方が名乗りを上げてくださいました。大人数を集めるわけにはいかないため、動画を撮影してホームページで公開しました。


 当時、かなりややこしい申請が必要だった「雇用調整助成金」について、自らが経営者として申請した体験をもとに解説してくださった社労士の会員、元金融マンとして融資制度の活用法から利用上の注意点まで語ってくれた中小企業診断士の会員など、かなり反響がありました。


 私自身、今までの常識が次々にひっくり返されるような状況の中で、その時々の正確な最新情報をつかめることは、本当によかったと感じています。


 4月27日、会場内の人数を事務局も含めて10名以下に制限するという厳戒態勢の中、膨大な数の委任と、わずか7名の出席者で支部総会を開催。私を新任の幹事長として選んでいただきました。

 

4月の支部総会は、コロナ禍で厳戒態勢の中、少人数で開催

 

動く中で生まれたこと

 

 事務局は、電話ヒアリングによる、「声の会員訪問」をかなり頑張ってくれました。


 時期を区切って目標を立て、最終的には支部会員数の70%となる500名にまで到達しました。


 直接、訪問できない中でも、なんとか接点をつくって寄り添おうとする過程で、出てきたエピソードを一つ紹介させていただきます。


 昨年創業したばかりの食堂を営む会員から、退会の申し出がありました。外出自粛で売り上げが大幅に減少し、かなり厳しい状況でした。話を聞いた事務局員は「退会はやむを得ない」と受け入れつつも、店の経営状態が気がかりでした。


 「会員でなくなっても、いつでも相談にきてください。まずは、支援機関に一緒に相談に行きましょう」とk-Bizに同行しました。k-Bizでは、お金をかけずにパブリシティ効果を高めようと、プレスリリースに協力して下さり、なんと地方版ながら日本経済新聞に食堂の紹介記事が掲載されたのです。


 その会員は、金融機関との交渉についても悩みを抱えていました。返済条件の変更交渉が進まないという深刻な悩みです。話を聞いた事務局員が金融機関に問い合わせて話を整理したところ、改めて交渉をやり直すことになったのです。当時は情報が錯綜する中で、金融機関側にも混乱があったのだと思います。


 本人からは「退会を考え直したい」という申し出がありましたが、担当事務局員は「経済的に厳しいこともありますし、金融機関の件にメドがついてから、改めて相談しましょう」と、せっかくの退会とりやめの話を断ってしまったのです!


 結果として、金融機関との条件変更交渉はうまくいき、正式に退会はとりやめとなりました。


 徹底的に経営者に寄り添い、もはや会員かどうかも関係なく、相手の立場に立って全力でサポートした事務局員を「そこまでやるか」と、私は誇りに思いました。コロナ禍における一連の対応の中で、事務局が果たした役割は本当に大きいと思います。

 

私が気づかされた同友会の値打ち

 

 その食堂を訪問して話を聞くと、店主は「同友会には経営者としての学びや、仲間づくりをしたくて入会した」と仰いました。


 私も、事業承継前から同友会で学び、会合への参加を通じて仲間もでき、語らうことで気づきをもらってきました。多くの経営者が求めることは同じだと思います。ですから当然、組織強化や会員増強の場面では「経営者としての学びや、経営体験の交流ができますよ」という魅力を伝えています。


 そこに加えて、コロナ禍で改めて気づいた同友会の値打ちは、経営者視点でかみ砕いた情報が得られること、困った時に相談できる仲間がいること、寄り添ってくれる事務局員がいること。激動の中に生きている我々経営者のよりどころとなる、そんな場所。それが本来同友会の持つ価値なのだと思います。

 

孤独な経営者をなくす

 

 ナリテツは、決して平たんな道を歩んできた会社ではありません。スターファームも、当初は農業と認められず、さまざまな規制に悩まされてきました。コロナであがき苦しむ観光や飲食業の方々のことは他人事とは思えません。


 同友会の値打ちは、中小企業家の苦悩と格闘の歴史に宿っています。私も、苦しい時には同友会で得た学び、人脈に救われてきました。その経験はまた、仲間へお返ししていきたいです。


 50年前の北海道同友会創立時の呼びかけにあった「孤独な経営者をなくそう」という大きな使命を引き継いで、これからも頑張っていきます。

 

■会社概要
設  立:2003年
資 本 金:3,000万円
従業員数:29名
事業内容:鉄骨製造、農業鉄骨製造

 

(2020年8月20日「組織強化・会員増強全国交流会」より 文責 立浪伸一)