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第14号 2017年7〜9月期 北海道同友会 景況調査報告
第14号
北海道中小企業家同友会景況調査報告
(2017年7〜9月期)
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文責:大貝健二
札幌市豊平区旭町4-1-40北海学園大学経済学部内
TEL:011-841-1161
「業況改善波及せず」
―人出不足感過去最高に―
 北海道中小企業家同友会2017年第3期(7〜9月)の業況判断DI(前年同期比)は、4.9と前回調査から4.3ポイントのやや改善を示した。改善幅は前回調査の9.5ポイントと比べるとやや弱まっているとはいえ、継続した景況感の改善が見られている。また、他調査(日銀短観、中同協DOR)と比較してみると、いずれの調査においても、前期からの改善傾向が見られている。そのなかで、北海道DOR調査においては、他調査の水準からみると、業況判断DIは低めに表れていることに注意が必要であろう。その要因として、売上高DI、採算の水準DI、足元の景況感を示す業況水準DIで改善、ないしは大幅な改善を示したのに対し、採算DIはほぼ横ばいで推移していることから、売上高の増加などが、利益の増加につながっていないことが考えられる。さらに、次期見通しに関しては、中同協DORを除いて、3〜6ポイントの悪化であるが、北海道DORでの悪化見通し幅が大きいことにも注意が必要であろう。
 以上のことを踏まえて、仕入・販売単価DIの推移と1人当たり売上高・付加価値額DIの推移を確認してみると、仕入単価は2013年時点ほどではないものの、31.8で高止まりしているのに対し、販売単価は1.1と前回調査から2.9ポイント程度の上昇しか示しておらず、依然として両項目には大きなギャップが存在している。また、1人当たり売上高・付加価値額では、1人当たり売上高は今期において10ポイント以上の大きな改善を示し3.8とプラスに転じたものの、1人当たり付加価値額はマイナス6前後でほぼ横ばい推移となっており、今後1人当たりの付加価値額をいかに高めていくかが、景況感のさらなる改善にむけて課題となってくるだろう。
 業種別にみると、全体的に景況感は改善を示すなかで、製造業だけが悪化を示している。売上高、採算、業況水準等の各DIの推移を見ても、製造業での好転、改善の動きがあまり見られない。日銀短観等では、製造業での好調が景況感の改善に寄与しているが、そのような動向が本調査では見られていない。そして、次期見通しに関しては、とりわけ業況判断DI、業況水準DIにおいて、ほぼすべての業種で悪化する見通しとなっている。また、規模別にみれば、企業規模の大きいところほど、各指標で改善幅が大きく、企業規模が小さいほど、改善幅が小さい傾向にあることにも注意を払う必要があるだろう。
 以上のことから、今期も前期に引き続いて景況感の改善は示したものの、全業種、全規模的に波及するところまでには至っていないという認識を持つ必要があると考えている。特に、採算の好転、1人当たりの付加価値額を上昇させていくことが、景況感のさらなる改善には求められる。
 他方で、この間、新聞報道等でも大々的に報道されるようになってきていることが、人手の確保の問題である。今期の調査においても、人手の過不足状況においては「不足感」が過去最高を示しているほか、経営上の問題点においても従業員の不足や熟練技術者の確保難など、「人」に関する課題が軒並み上昇している。課題を共有し、魅力ある企業づくり、魅力ある人財育成を同友会運動としてより強固に進めていかなければならないだろう。

≪景況調査について≫
○ 景況調査は、回答者の意識・マインドを基に景気動向を分析する調査です。
○ 特に、同友会が実施する景況調査は、経営者の意識を反映するものであるため、景気動向がはっきりと表れやすいと言われています。
○ 景況動向、および「次期見通し」を自社の経営指針等の見直し等に活用してください。

≪DI値について≫
○ DI値は、「良い」と回答した割合(%)から「悪い」と回答した割合(%)を引いた数値です。
○ 「良い」と回答した企業が多ければ多いほどDI は高水準で推移するが、その逆もしかり。
○ 景況調査では、(1)DI 値の水準(プラスかマイナスか、また水準はどの程度か) 、 (2)前回調 査からの好転幅、悪化幅の大きさを主に見ていきます。
○ DI値の変化幅について、
@1ポイント以内の場合:「ほぼ横ばい」と表現します。
A1〜5ポイントの場合:「やや」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。
B10ポイント以上の場合:「大幅な」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。

【回答企業数について】
全体で188社(札幌88、帯広28、旭川15、函館12、釧路18、北見4、日胆14、小樽9)
【業種別】建設業:39、製造業:45、流通商業:75、サービス業:28、その他:1
【規模別】20人未満:65、20人-50人:61、50人-100人:29、100人以上:25、不明:8

回答企業数

1. 全体の動向
1-1. 業況判断DI(前年同期比)は4.3Ptの改善:0.6から4.9へ
日銀短観、中同協DORにおいても、前期から継続して改善しているが、水準は本調査では低位
→次期見通しに関しては、中同協DORで横ばいだが、他は本調査含め悪化見通し
業況判断DIの推移
1-2.売上高DI、採算DI、採算水準、業況水準(前年同期比)
【売上高】5.9Ptの改善(0.0→5.9)(次期:ほぼ横ばい(5.9-→5.0))
【採 算】ほぼ横ばい(▲5.8→▲6.0)(次期:ほぼ横ばい(▲6.0→▲5.1))
【採算の水準】17.0Ptの大幅な改善(25.6→42.6))
【業況水準】16.0Ptの大幅な改善(▲5.2→10.9)(次期:9.2Ptの悪化(10.9→1.6))
売上高DI・採算DI・採算水準DI・業況判断DI・業況水準DIの推移
1-3.仕入・販売単価、1人当たり売上高、1人当たり付加価値額
・仕入単価DI:前回調査からほぼ横ばい(32.1→31.8)
・販売単価DI:前回調査から2.9Ptのやや上昇(▲1.8→1.1)
※仕入単価DIと販売単価DIのギャップ拡大は、単価の上昇に伴い一段落
仕入単価・販売単価DI(前年同期比)
1-4.1人当たり売上高、付加価値額
・1人当たり売上高:10.6Ptの大幅な改善(▲6.9→3.8)
・1人当たり付加価値額:前回調査とほぼ横ばい(▲6.4→▲5.9)
1人当たり売上高・付加価値(前年同期比)
1-5.人手の過不足、資金繰り、設備の過不足
【人手の過不足】不足感の更新が続き、60%に迫っていることは要注目
人手の過不足
【資金繰りの状況】順調が後退し、余裕感と窮屈感のがそれぞれやや高まる。
資金繰りの状況
【設備の過不足】適正感が高まり続ける。もうじき80%に届くところまで。
設備の過不足
2.業況判断
2-1.業種別:製造業を除き改善するも、大幅なものではない。/製造業以外は水面上へ
建設業:8.4Ptの改善(14.7→23.1)、製造業:7.1Ptの悪化(▲4.3→▲11.4)
流通商業:6.9Ptの改善(▲1.4→5.4)、サービス業:8.0Ptの改善(▲4.2→3.8)
次期見通し:流通商業を除いて悪化見通し、特に建設業、サービス業で大幅な悪化
→次期見通しDI(建設業:▲2.7、製造業:▲14.0、流通商業:8.1、サービス業:▲7.7)
業種別業況判断
2-2.規模別:20人未満規模層を除いて改善(20人以上50人未満規模は大幅な改善)
20人未満:7.8Ptの悪化(0.0→▲7.8)、20〜50人:15.3Ptの大幅な改善(▲3.4→11.9)
50〜100人:7.2Ptの改善(10.0→17.2)、100人以上:4.8Ptのやや改善(▲4.8→0.0)
次期見通し:100人以上規模層を除いて、悪化見通し(20人未満はほぼ横ばい)
→次期見通しDI(20人未満:▲7.9、20〜50人:6.9、50〜100人:▲3.6、100人以上:4.0)
規模別業況判断
3.売上高
3-1.業種別:建設業での大幅な改善、サービス業を除いて改善(前回調査と同様の傾向)
建設業:12.8Ptの大幅な改善(0.0→12.8)、製造業:ほぼ横ばい(2.1→2.2)
流通商業:9.8Ptの改善(▲5.7→4.1)、サービス業:8.4Ptの悪化(12.0→3.6)
次期見通し:流通商業、サービスで改善、建設業と製造業で悪化見通し
→(建設業:10.3、製造業:▲7.0、流通商業:7.0、サービス:11.5)
業種別売上高(前年同期比)
3-2.規模別:全規模層で改善(20人未満、20−50人規模ではやや改善)
20人未満:2.1Ptのやや改善(▲8.3→▲6.3)、20〜50人:3.3Ptのやや改善(8.3→11.7)
50〜100人:6.9Ptの改善(10.3→17.2)、100人以上:14.3Ptの大幅な改善(▲14.3→0.0)
次期見通し:20人未満規模、100人以上規模では改善、2全体的に改善基調、50−100人規模では悪化
→(20人未満:0.0、20〜50人:6.7、50〜100人:▲3.7、100人以上:21.7)
規模別売上高(前年同期比)
4.採算
4-1.業種別:サービス業で大幅な悪化が目立つ(前回調査と同様)
建設業:5.7Ptの改善(▲3.0→2.6)、製造業:6.7Ptの改善(▲17.8→▲11.1)
流通商業:1.1Ptのやや悪化(▲3.0→▲4.1)、サービス業:23.4Ptの大幅な悪化(8.0→▲23.4)
次期見通し:建設業、製造業で悪化見通し
→(建設業:▲2.7、製造業:▲14.0、流通商業:1.4、サービス:▲12.5)
業種別採算(前年同期比)
4-2.規模別:50人以上規模で改善、50人未満規模で悪化(前回調査と同様の傾向)
20人未満:3.6Ptのやや悪化(▲10.7→▲14.3)、20〜50人:1.6Ptのやや悪化(▲6.8→▲8.3)
50〜100人:6.9Ptの改善(6.9→13.8)、100人以上:6.0Ptの改善(▲10.0→▲4.0)
次期見通し:50-100人規模層での大幅な悪化
→(20人未満:▲6.6、20〜50人:▲5.1、50〜100人:▲7.7、100人以上:0.0)
規模別別採算(前年同期比)
5.採算の水準
5-1.業種別:建設業を除いて大幅な改善
建設業:3.2Ptのやや悪化(35.5→32.3)、製造業:13.9Ptの大幅な改善(30.0→43.9)
流通商業:21.8Ptの大幅な改善(25.8→47.6)サービス業:37.81Ptの大幅な改善(4.5→42.3)
業種別採算の水準
5-2.規模別:全規模層で改善(20人以上の各規模層で大幅な改善)
20人未満:5.4Ptの改善(30.4→35.7)、20〜50人:32.0Ptの大幅な改善(5.8→37.7)
50〜100人:18.0Ptの大幅な改善(32.0→50.0)、100人以上:15.9Ptの大幅な改善(45.0→60.9)
規模別採算の水準
6.業況水準
6-1.業種別:全業種で改善、とりわけ建設業と流通商業で改善幅が大きい
建設業:20.4Ptの大幅な改善(5.9→26.3)、製造業:6.2Ptの改善(▲8.5→▲2.3)
流通商業:23.8Ptの大幅な改善(▲10.3→13.5)、サービス業:3.7Ptのやや改善(0.0→3.7)
次期見通し:サービス業は横ばいだが、全体的に悪化見通し
→(建設業:10.5、製造業:▲15.9、流通商業:6.8、サービス業:3.7)
業種別業況水準(前年同期比)
6-2.規模別:全規模層で改善、特に20人以上の各規模層で大幅な改善
20人未満:6.3Ptの改善(0.0→6.3)、20〜50人:27.6Ptの大幅な改善(▲12.1→15.5)
50〜100人:10.6Ptの大幅な改善(6.7→17.2)、100人以上:16.8Ptの大幅な改善(▲4.8→12.0)
次期見通し:100人以上規模を除いて、悪化の見通し
→(20人未満:▲1.6、20〜50人:5.2、50〜100人:▲13.8、100人以上:16.0)
規模別業況水準(前年同期比)
7.人手の過不足、資金繰り、設備の過不足
7-1.業種別人手の過不足:人手不足が顕著、特に建設業で▲70台。他の業種でも▲50台が目立つ。
業種別・人手の過不足
7-2.規模別人手の過不足:100人以上規模での著しい不足感(▲47.6→▲76.0)。
規模別・人手の過不足
7-3.業種別資金繰り:製造業で資金繰りの悪化が目立つ(19.5→0.0)
業種別・資金繰り
7-4.規模別資金繰り:100人以上規模で改善を続ける(31.6→37.5)
規模別・資金繰り
7-5.業種別設備の過不足:全業種マイナスで推移、建設業で大幅な悪化
業種別・設備の過不足
7-6.規模別設備の過不足:全規模層でマイナス推移、50人以上100未満規模で改善、他は悪化
規模別・設備の過不足
8.経営上の問題点、次期の経営上の力点
【経営上の問題点】
従業員の不足(37.6%)、人件費の増加(30.3%)、同業者間の価格競争の激化(28.7%)
下線項目が、回答上位1,2位にくるのは初。そのほか、熟練技術者の確保難、下請業者の確保難、取引先の減少、仕入単価の上昇、管理費等間接経費の上昇が高まってきていることに注目。
経営上の問題点
【経営上の力点】
新規受注(顧客)の確保(51.4%)、人材確保(45.9%)、社員教育(37.7%)
→人材確保、社員教育の回答割合が急上昇
経営上の力点
※参考
経営上の問題点

次期の経営上の力点

9.経営上の努力コメント(業種別)
※規模層は全規模層からコメントがあったが、地域別にみれば、札幌と帯広のみ

【建設業】
・社員教育を外部機関に依頼 後継者のいない会社を買収
・人事評価制度の構築
・新規受注の確保
・外注先の確保 外注先業者の件数を増やす
・今後健康経営について取り組みする 社員教育により力を入れていく
・経営状況の見える化 決算手当の支給
・上期受注減を中期とりもどし、下期には全社一丸となって安全確保と利潤の追求に取り組みたい。土木・建築技術員の確保各1名にも全力をあげたい。
・健康診断の継続(年1回実施)/禁煙、受動喫煙対策として分煙喫煙室の設置
・人材確保のための活動。具体的にはインターンシップの積極的な受け入れを行っています。
・地道に、正直に経営する。
・一層の財務体質強化、受注強化

【製造業】
・生ものを製造しているので中々計画生産が出来ず、連休が多くなっているので製造の従業員のシフトを上手く組んで残業を少なくするよう努力しているが人員不足でうまく出来ていない
・新商品の開発中
・安全衛生委員会活動の推進
・製品需要停滞の為経費削減
・引き続き営業力強化
・固定費の削減
・社員面談レコミュニケーションを取った。
・製造部門の時間外労働(残業)を一部許可し、生産高を上げた。
・人材確保
・新商品の開発
・加工場として年間製造生産を増やしたいが、交替パートを使用して作業を進めたいが難しい。残業時間規制があるときびしい。

【流通商業】
・今後営業強化し新規受注の確保を目指す(1名採用予定)
・売単価出来るだけ下げない 細かいコストダウンの実施
・人材確保の為の制度構築 社員紹介報奨制度
・事業承継 集客対策
・以前は売れなくなった品は半額にすれば売れた ここ最近はいらない品は安くても買わなくなった 売れる消費の確保が一番 そういう品はすぐ無くなるので大変
・社員教育の一つとして経営指針の考え方の学習。併せて基本スキルの向上に努めた。今後持続的に取り組みたい
・社員教育充実化に積極的に取組んだ。(今後も継続)採用(ドライバー、パート)についても困難さは軽減されたと受止めている。
・受注、売上、粗利の目標達成と共にワークライフバランスの推進。
・売場・倉庫の整理整頓と断捨離
・商品の在庫回転率の向上=交差比率年間300をクリアしよう。
・例年7〜9月期は他の期間と比べ売上が伸びない期間ですが、何もしないでいる事は殆どなく常に設備投資をして次の売上増の確保を目指しています。
・会社の顧客内取引を分析し、強み商材のシェアを出し、ターゲットを絞り営業活動を行う。(付加価値を向上させることを目標としている)
・人財の確保・社員教育の実施が課題です。我々中小企業の宿命でしょうか。人財が集まりません。こつ二・三年、入社しても退職のケースが多いままです。学校教育の中で、社会人、職業人としての自覚教育が大切かと思います。

【サービス業】
・販路拡大 国内から海外へのシフトを検討しており外国人21人雇い入れた
・市場が減少傾向になる中で自社事業をどう成長させるかが大きな課題 社員の評価基準の見直しを行い会社と社員がどう成長していくかを明確にしたい 事業計画づくりが出来る幹部社員を育てたい
・積極的に人材採用を行って将来の発展に備えている
・人材確保、育成に努力しないといけない
・業務増加による資金繰り等
・宅配BOXの普及に力を入れる
・マーケット開発に取り組み、今後浸透を図り、成約に繋げたい。
・社員の負担を意識した仕事の仕方、残業時間のさく減、業務毎の原価管理の開始。
・新規事業の情報取りに集中した、時期が決まったら即行動
・国家資格である歯科技士の減少問題は、歯科技工製造が主な当社にとって、優秀な歯科技工士を採用するために、積極的に会社見学会や展示会を開催したりしてPR活動を行っております。また、新人についてもキャリアガイダンスを実施して積極的なコミュニケーションを図るなど、働きやすい職場環境の構築を推し進めております。
・人材の確保を積極的に行った。
・残業削減とワークライフバランスの重要性を考えさせたい
・商品、サービスの付加価値アップで他社と差別化を図る
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