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第12号 2017年1〜3月期 北海道同友会 景況調査報告
第12号
北海道中小企業家同友会景況調査報告
(2017年1〜3月期)
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文責:大貝健二
札幌市豊平区旭町4-1-40北海学園大学経済学部内
TEL:011-841-1161
業種間のバラツキあるも、景況感の改善は続かず
―人手不足による黒字倒産もありえる状況―
 北海道中小企業家同友会2017年第1期(1〜3月)の業況判断DI(前年同期比)は、前回調査から5.3ポイントの悪化を示しマイナス8.9となった。前回調査の次期見通しが軒並み悪化であったことを反映した結果となり、2016年第3期から3期連続の改善とはならなかった。全体でみれば悪化を示しているが、業種別には動向が異なる。今期調査で大幅な悪化を示したのは、前回調査で景況感の改善を示していた建設業と製造業であり、今期では建設業で22.0ポイント、製造業で14.3ポイントもの大幅な悪化を示した。他方で、サービス業では17.9ポイントもの大幅な改善を示すなど、業種間のコントラストも目立つ。
 次期見通しに関しては、サービス業で改善し、建設業と製造業で悪化見通しであり、今期とは真逆の推移を示す見通しとなっている。また、規模別に見たときには100人以上規模において業況判断、売上高、採算等の各指標で大幅な改善見通しとなっている。なぜ大幅な改善見通しとなるのか、実態に基づく検証が必要であろう。というのも、今期調査では仕入単価DIの上昇と販売単価DIの低下に伴い、前回調査まで縮小傾向にあった両DIのギャップは大幅に拡大しているほか、1人当たり売上高、付加価値に関しても前回調査から大幅に低下しており、全体としては前期までの景況感の改善は一過性のものであったことが今期調査で示されているからである。
 また、今期の経営上の問題に関しては、「従業員の不足」が最も回答割合が高くなっている。これは2006年に北海道同友会の独自調査として調査を開始して以来初めてのことである。それだけ正規・非正規を問わず人手不足状況が深刻さを増していることでもある。新卒採用に関しては今後も売り手市場が続く見通しであり、中小企業では人手の確保は困難を極めることがほぼ確実である。すでに様々な取り組みを展開しているとは思うが、抜本的な対策をもう一度考えていく必要があると思われる。

≪景況調査について≫
○ 景況調査は、回答者の意識・マインドを基に景気動向を分析する調査です。
○ 特に、同友会が実施する景況調査は、経営者の意識を反映するものであるため、景気動向がはっきりと表れやすいと言われています。
○ 景況動向、および「次期見通し」を自社の経営指針等の見直し等に活用してください。

≪DI値について≫
○ DI 値は、「良い」と回答した割合(%)から「悪い」と回答した割合(%)を引いた数値
○ 「良い」と回答した企業が多ければ多いほどDI は高水準で推移するが、その逆もしかり。
○ 景況調査では、(1)DI 値の水準(プラスかマイナスか、また水準はどの程度か) 、 (2)前回調 査からの好転幅、悪化幅の大きさを主に見ていきます。
○ DI値の変化幅について、
@1ポイント以内の場合:「ほぼ横ばい」と表現します。
A1〜5ポイントの場合:「やや」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。
B10ポイント以上の場合:「大幅な」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。

【回答企業数について】
全体で163社(札幌88、帯広19、旭川11、函館6、釧路16、北見6、日胆10、小樽7)
【業種別】建設業:35、製造業:41、流通商業:67、サービス業:19、その他:1
【規模別】20人未満:59、20人以上50人未満:55、50人以上100人未満:28、100人以上:16、不明:5

1. 業況判断DI(前年同期比)は5.3Ptの悪化:▲3.6から▲8.9へ
※他調査(日銀短観等)との比較:他調査が改善を示したに対し、本調査は悪化となった。
→次期見通しでは、他調査が悪化見通しであるのに対し、本調査では改善見通しである。
業況判断DIの推移
1-2.業種別業況判断:サービス業は大幅改善示すも、建設業、製造業の大幅な悪化が全体を押し下げる。
建設業:22.0Ptの大幅な悪化(13.2→▲8.8)、製造業:14.3Ptの大幅な悪化(▲2.8→▲17.1)
流通商業:1.1Ptのやや改善(▲8.8→▲7.7)、サービス業:17.9Ptの大幅な改善(▲12.0→5.9)
次期見通し:建設業、製造業で改善見通し、サービス業で大幅な悪化、流通商業で持続的な改善見通し
→次期見通しDI(建設業:8.8、製造業:▲4.9、流通商業:▲3.0、サービス業:▲11.8)
業種別業況判断
1-3.規模別業況判断 :前期とは真逆の推移:100人以上の大幅な改善、100人未満各規模層の悪化。
20人未満:2.7Ptのやや悪化(▲9.6→▲12.3)、20〜50人:10.4Ptの大幅な悪化(6.7→▲3.7)
50〜100人:10.6Ptの大幅な悪化(3.2→▲7.4)、100人以上:7.6Ptの改善(▲26.3→▲18.8)
次期見通し:20人以上50人未満規模のみ悪化見通し、100人以上規模のかつてない明るい見通し要因は?
→次期見通しDI(20人未満:▲10.3、20〜50人:▲13.0、50〜100人:11.1、100人以上:31.3)
規模別業況判断
2.売上高DI、採算DI、採算水準、業況水準(前年同期比)
【売上高】全体:5.6Ptの悪化(▲1.2→▲6.7)(次期:8.0Ptの改善(▲6.7→▲1.3)
【採 算】全体:4.4Ptのやや悪化(▲1.2→▲5.7)(次期:3.6Ptのやや改善見通し;▲5.7→▲2.0)
【採算水準】全体:31.4Ptの大幅な悪化(47.9→16.5)
【業況水準】全体:8.0Ptの悪化(3.0→▲5.0)(次期:1.9Ptのやや悪化(▲5.0→▲6.9)
売上高DI、採算DI、採算水準DI、業況判断DI、業況水準DIの推移
2-1.業種別売上高: サービス業で大幅改善も、建設業の大幅な悪化により全体ではマイナス基調
建設業:16.6Ptの大幅な悪化(5.1→▲11.4)、製造業:1.0Ptのやや改善(▲8.3→▲7.3)
流通商業:6.0Ptの悪化(▲2.9→▲9.0)、サービス業:11.8Ptの大幅な改善(4.0→15.8)
次期見通し:サービス業で悪化見通しだが、それ以外の業種では改善の見通し
→(建設業:8.3、製造業:2.3、流通商業:16.6、サービス:▲9.9)
業種別売上高
2-2.規模別売上高:ほぼ全規模層で悪化
20人未満:ほぼ横ばい(▲7.5→▲6.8)、20〜50人:8.2Ptの悪化(10.0→1.8)
50〜100人:4.3Ptのやや悪化(▲6.5→▲10.7)、100人以上:3.9Ptのやや悪化(▲21.1→▲25.0)
次期見通し:50人以上規模層で改善見通し、とりわけ100人以上規模で改善幅が大きい。
→(20人未満:▲14.8、20〜50人:▲3.8、50〜100人:17.9、100人以上:37.5)
規模別売上高
2-3.業種別採算: サービス業で大幅な改善、製造業で大幅な悪化
建設業:2.9Ptのやや悪化(5.9→2.9)、製造業:25.4Ptの大幅な悪化(2.9→▲22.5)
流通商業:ほぼ横ばい(▲9.1→▲9.2)、サービス業:31.6Ptの大幅な改善(0.0→31.6)
次期見通し:建設業、サービス業で大幅な悪化見通し(建設業は2期連続悪化見通し)
→(建設業:▲10.0、製造業:▲2.7、流通商業:▲0.0、サービス:12.5)
業種別採算
2-4.規模別採算:程度の差はあるが50人以上100人未満規模を除き悪化、100人以上規模で大幅な改善
20人未満:3.4Ptのやや悪化(0.0→▲3.4)、20〜50人:1.7Ptのやや悪化(3.6→1.9)
50〜100人:3.0Ptのやや改善(▲6.7→▲3.7)、100人以上:17.5Ptの大幅な悪化(▲15.8→▲33.3)
次期見通し:50人未満規模層で悪化見通し、50人以上規模層で改善見通し、100人以上の改善幅大!
→(20人未満:▲13.2、20〜50人:▲2.1、50〜100人:7.7、100人以上:20.0)
規模別採算
2-5.業種別採算水準:全業種で大幅な悪化
建設業:25.1Ptの大幅な悪化(39.4→14.3)、製造業:49.0Ptの大幅な悪化(43.3→▲5.7)
流通商業:24.2Ptの大幅な悪化(49.2→25.0)、サービス業:14.2Ptの大幅な悪化(6.09→46.7)
業種別採算の水準
2-6.規模別採算の水準:50人以上100人未満規模を除いて大幅な悪化
20人未満:36.7Ptの大幅な悪化(40.4→3.8)、20〜50人:42.5Ptの大幅な悪化(49.1→6.5)
50〜100人:4.2Ptのやや改善(39.3→43.5)、100人以上:33.3Ptの大幅な悪化(86.7→53.3)
規模別採算の水準
2-7.業種別業況水準: サービス業で大幅な改善、建設業と製造業で大幅な悪化
建設業:14.6Ptの大幅な悪化(20.5→5.9)、製造業:35.5Ptの大幅な悪化(11.1→▲24.4)
流通商業:2.9Ptのやや改善(▲4.4→▲1.5)、サービス業:18.4Ptの大幅な改善(▲12.5→5.9)
次期見通し:製造業を除いて悪化見通し;建設業の後退が懸念材料
→(建設業:▲2.9、製造業:▲4.9、流通商業:▲9.0、サービス業:▲11.8)
業種別業況の水準
2-8.規模別業況水準:20人以上50人未満以外の規模で軒並み悪化、20人以上50人未満規模の改善は弱い
20人未満:12.1Ptの大幅な悪化(1.9→▲10.2)、20〜50人:1.9Ptのやや改善(0.0→1.9)
50〜100人:7.4Ptの悪化(0.0→▲7.4)、100人以上:16.8Ptの大幅な悪化(10.5→▲6.3)
次期見通し:50人以上規模で改善見通し、50人未満規模で悪化見通し
→(20人未満:▲13.6、20〜50人:13.0、50〜100人:11.1、100人以上:6.3)
規模別業況水準
3.仕入・販売単価、1人当たり売上高、1人当たり付加価値額
3-1.
仕入単価DI:前回調査から13.8Ptの大幅上昇(11.3→25.0)
販売単価DI:前回調査から4.6Ptの低下(▲1.2→▲5.8)
※仕入単価DIと販売単価DIのギャップは30.8に、2016年は縮小傾向にあったが、再び拡大へ
仕入単価・販売単価DI
3-2.業種別仕入単価DI
1人当たり売上高:3.0→▲15.6(前回調査より18.6.Ptの大幅な低下)
1人当たり付加価値額:▲3.0→▲16.9(前回調査より13.9Ptの大幅な低下)
1人当たり売上高・付加価値
4.人手の過不足、資金繰りの状況、設備の過不足
【人手の過不足】全体として不足感の高まりが継続中
人手の過不足
[業種別]建設業、サービス業で▲50台。他の業種でも▲30〜40台。人手不足が顕著
業種別・人手の過不足
[規模別]100人以上規模での著しい不足感が5期連続で続いている(-73.3)。
規模別・人手の過不足
【資金繰りの状況】余裕感(余裕+やや余裕)が高まる一方で、窮屈感もやや高まりを示す。
資金繰りの状況
[業種別]建設業、サービス業のDIは改善、製造業は大幅な悪化を示した。
業種別・資金繰り
[規模別]100人以上規模以外で改善するも、100人以上規模では25ポイントの悪化
規模別・資金繰り
【設備の過不足】ほぼ横ばい推移。
設備の過不足
[業種別]建設業、サービス業で不足感が高まる。
業種別・設備の過不足
[規模別]20人未満でやや不足感が高まる。
規模別・設備の過不足
4.経営上の問題点、次期の経営上の力点
【経営上の問題点】
「従業員の不足」(39.1%)が、今期調査初めて最も高くなる。また、「取引先の減少」が17.9%ではあるが、今期で顕著な高まりを示していることに注目。
経営上の問題点
【経営上の力点】
「人材確保」(46.5%)、「社員教育」(42.7%)といった「人材」に関する項目の高止まり状況
経営上の力点
経営上の努力・コメント一覧
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