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AI生かし創造的な仕事を 公立はこだて未来大学 松原仁教授

2019年01月15日

■3回目のAIブーム

 

 人工知能(AI)は2010年代に入り、3回目のブームを迎えています。きっかけは機械学習。これは、コンピュータもデータから学習するという技術で、その一手法がディープラーニングです。

 

 ディープラーニングには膨大なデータが必要です。有名な例でいくと、囲碁ではプロ棋士の手を3000万局面集めました。そんなにデータがある領域は滅多になく、ディープラーニングのネックとなっています。

 

 そこでビッグデータやIoTを活用しています。IoTは、いろいろなものにセンサーを付け、たくさんのデータを集める技術で、ディープラーニングの入力に使えます。

 

 また、コンピュータの性能が上がったというのがかなり効いています。過去2回のブームが冬の時代になったのは、速いコンピュータがなかったから。コンピュータの性能が上がり、人間の脳のように複雑なネットワークを扱えるようになったのです。

 

■AIを公共交通に活用

 

 はこだて未来大発のベンチャー企業「未来シェア」で、リアルタイム乗り合いサービス「SAVS」の研究を進めています。乗り合いのタクシーですが、事前予約の必要がなく、スマートフォンを介して同じ方向に向かうお客さんがいたら、寄り道してその人も乗せるというサービスです。

 

 多くの地域で公共交通が疲弊しています。路線バスは路線も本数も減り、タクシーは便利ですが、日常使いするには高い。高齢者の運転も問題になっています。こうした問題を解決するため、バスよりも便利で、タクシーよりも安い公共交通ができないかというのが原点です。

 

 たくさんの車を効率的に、どのお客さんにどの車を割り当てるのか計算するAIの技術を使っています。シミュレーション上は車が1000台以上、つまり大都市でも利用可能です。初期投資もタブレット端末を車の台数分買うくらいしかかかりません。

 

 既存のタクシーやバスと競合するかといえば、運転手不足に対応でき、自家用車を運転している人が、こちらに移っていくと利用者自体が増えます。今、全国各地で実証実験を進めています。

 

■AIとの共存

 

 人間がコンピュータよりも得意なことはルールが不明確で、範囲が非限定のこと。言い換えれば、新しい枠組み、新しい価値を創造することです。AI研究の世界的権威であるカーツワイル氏は、2045年にAIが人間のすべての知能を超えると言っていますが、30年足らずでそうした時代が来るとは思いません。しばらくはコンピュータが少しずつ賢くなり、役割を分担してくれるでしょう。役割をどう分担するかが問題です。

 

 このためには人間がコンピュータよりも得意な能力を伸ばすことが必要です。人間は人工知能の力を生かし、より賢くなっていけるはずです。AI時代には、人間がなすべき創造的な仕事が一層求められ、そのための教育が重要となります。

 

 知能という能力は人間にとって特別で、それがAIに脅かされるのではないかという不安感もあると思います。人類の歴史をひもとくと、新しいものを受け入れるには時間が必要です。江戸時代の終わりに外国人が入ってきた時も最初は排斥しました。広い心を持って、AIを受け入れていくべきだと思います。

 

 (12月12日、経営者大学「経済学」コース第9講から)

 


 

 まつばら・ひとし=1959年、東京生まれ。通商産業省工技院電子技術総合研究所を経て、2000年から現職。未来シェア代表取締役社長。専門は人工知能