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北海道地域7-9月期景況調査結果 業況悪化、改善へ力弱く

2018年11月15日

 中小企業家同友会全国協議会と北海道中小企業家同友会が四半期ごとに実施している景況調査結果(2018年7―9月期)がこのほどまとまりました。全国では2416社中967社が回答。うち北海道では836社中300社から回答を得ました。この結果について、北海学園大学経済学部の大貝健二准教授(中小企業論)にコメントを頂きました。(DI値は特に断りのない限り前年同月比、▲はマイナス、①―④は四半期)

 


 

 北海道中小企業家同友会2018年第3期(7―9月)の業況判断DI(前年同期比)は、マイナス6・3と、前回調査のマイナス2・4から3・9㌽のやや悪化を示した。前回調査においては、今期は改善を示し、景況感は水面上に浮上する見通しであったが、そのような結果にはならなかった。また、業況判断DIの次期見通しでは、マイナス4・3へと改善の見通しではあるが、その力は弱いと言わざるを得ない。

 

 今期の動向を他の調査と比較してみると、日銀短観では全産業、および北海道調査(札幌支店)において1―2㌽の悪化を示し、さらに次期において、とりわけ北海道調査において大幅な悪化見通しとなっている。他方で中同協DORでは、前回調査からやや改善し、次期ではさらに改善の見通しである(図1)。

 

 このように、調査によって先行き見通しが異なっているが、北海道経済を取り巻く環境は大きく変化しており、従来にも増して注意が必要であると筆者は考えている。

 

 第1に、9月6日に発生した北海道胆振東部地震による影響は、本調査にはほとんど加味されていない。地震やブラックアウトによる、農業や観光業の直接的被害に加えて、さらに風評被害とも言える状況が生じている。経済状況が震災前に戻るまでには、数年程度の時間を要するものと思われる。

 

 第2に、「トランプショック」ともいえる米中貿易摩擦や自動車関税の引き上げに加えて、中東の情勢不安によるインパクトが今後生じる可能性が十分にあり得る。さらには、安倍政権が2019年10月に消費税10%への引き上げを発表するなど、北海道経済が浮上するポジティブな材料が見当たらない。

 

 業況判断のほか、売上高、採算、採算の水準、業況水準の主要景気判断項目を見てみると、今期は、採算の水準と業況水準で改善を示したが、売上高、採算の項目が悪化した。次期は、改善見通しではあるが、これらの指標が改善に向かうのかどうか、注視が必要である(図2)。

 

 業種別に見ると、サービス業のみ改善する結果となった。特に、1―3期まで好調だった建設業は2期連続の悪化を示し、次期も悪化見通しとなっている。また、前回調査で大幅に改善した製造業は今期では悪化を示すなど、業種間の動向も足並みがそろわない状況が続いている(図3)。

 

 

 今期の経営上の問題点を見ると、前回調査までの動向と同様に、「従業員の不足」(42・7%)と「人件費の増加」(34・4%)の割合が高く、さらに今期は、「熟練技術者の確保難」(28・5%)が次いでいる。次期の経営上の力点に関しても、「人材確保」(48・6%)、「社員教育」(43・6%)の割合が高くなっている。

 

 「人手の過不足」状況を問うた項目では、調査開始以来、不足感(「やや不足」と「不足」の合計)が60%を上回るなど、調査を重ねるたびに、「人」に関する問題が大きくなっている。自由記述においても、人材確保で四苦八苦している回答が非常に多い。

 

 中小企業経営を取り巻く環境は深刻の度を増している。当たり前のことしか書けないが、自社の立ち位置を改めて確認するとともに、組織的な同友会運動を展開することによって、現状を打破する方法を見つけ出すことが必要だろう。

 

北海道中小企業家同友会景況調査報告(2018年7~9月期)