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建設業の急減速は注意必要(同友会景況調査2018年4―6月期)

2018年08月15日

主要項目で大きく改善

 

 中小企業家同友会全国協議会と北海道中小企業家同友会が四半期ごとに実施している景況調査結果(2018年4―6月期)がこのほどまとまりました。今調査より、調査対象先を見直して件数を大幅に増やし、842社に調査用紙を送付しました。そのうち306社から回答があり、前期調査より144社増えています。全国では2373社中1003社が回答しました。この結果について、北海学園大学経済学部の大貝健二准教授(中小企業論)にコメントを頂きました。(DI値は特に断りのない限り前年同月比、▲はマイナス、①―④は四半期)

 


 

 北海道中小企業家同友会18年第2期(4―6月)の業況判断DI(前年同期比)は、前回調査のマイナス13・3から10・9㌽の大幅な改善を示し、マイナス2・4となった(図1)。

 

 2期連続の悪化を示した前回調査では、今期は改善する見通しとなっていたが、その通りの結果となった。

 

 今期の業況判断DIの動向を、日銀短観や中同協DORと比較してみると、これまでと同様に日銀短観とは大きく異なる。北海道DORや中同協DORでは、今期改善したことに加え、次期も改善見通しであるのに対し、日銀短観ではDIは依然として高水準での推移ではあるが、新聞報道でも見られるように製造業を中心に2期連続の悪化を示し、さらに次期見通しも悪化の見通しとなっている。全国的には大企業を中心に「トランプショック」を懸念したものと考えられるが、本調査においても、今後の動向に注意が必要である。

 

 業況判断のほか、売上高、採算、採算の水準、業況水準の主要景気判断項目を見ると、今期はいずれの指標も改善していることが特徴である。ただ、前回調査において大幅な悪化を示した業況水準(業界の景気水準、図2)は、5㌽未満の「やや改善」にとどまっている。しかし、次期以降も全体的に改善の見通しであり、DI値がどのように推移するのか要注目である。

 

 今期の景況感が改善した理由としては、売上高の増加、販売単価の上昇が挙げられる(図3)。

 

 

 

 

 売上高に関しては、例年この調査時期は売上高が増加する傾向がある。その傾向は、今期も同様であるが、DI値の改善幅が例年よりも大きい。また、景況調査分析会議では「原材料等の仕入単価の上昇分をようやく販売単価に転嫁できるようになってきた」という意見も聞かれた(図4)。

 

 

 業種別に見ると、これまで4期以上にわたって悪化を続けていた製造業で大幅な改善がみられ、また次期においても改善の見通しであることが明るい材料である。

 

 しかし、今後の景況感に大きく影響を与えそうな懸念材料もある。それは、建設業における急減速である。17年第4期調査から建設業にブレーキがかかり始めていることは明らかだったが、今期調査において、主要景気判断項目のほぼすべてで10㌽以上の大幅な悪化を示した。特に官公需がメインである建設業での悪化幅が大きく、次期においても注視が必要である。

 

 今期の経営上の問題点を見ると、「従業員の不足」(42・7%)と「人件費の増加」(34・4%)が前回調査と同様に1位、2位となっている。また、前回も上昇を示した「仕入単価の上昇」の回答割合がさらに高まってきており、仕入単価の上昇分を販売価格に転嫁できるかどうかがカギとなるだろう。

 

 次期の経営上の力点に関しては、「新規受注(顧客)の確保」(47・6%)、「人材確保」(46・2%)、「社員教育」(44・8%)の3項目が前回調査と同様に割合が高くなっている。このほか「新規事業の展開」が低位ながら高まりを見せてきている(図5)。

 

 以上のように、今期は景況感が水面下ではあるが改善する結果となった。また、次期見通しも比較的明るいものとなっている。しかし、建設業の急ブレーキに加え、7月に発生した西日本豪雨災害の影響は、生産、物流など全国に広がっている。これらが道内景況にどのような影響をもたらすか、注意を払う必要があるだろう。