HOME 北海道同友会 景況調査報告
第13号 2017年4〜6月期 北海道同友会 景況調査報告
第13号
北海道中小企業家同友会景況調査報告
(2017年4〜6月期)
印刷用 PDF
文責:大貝健二
札幌市豊平区旭町4-1-40北海学園大学経済学部内
TEL:011-841-1161
景況感の改善示すもまだら模様
―業種間、規模間で異なる様相、仕入単価の上昇に注意―
 北海道中小企業家同友会2017年第2期(4〜6月)の業況判断DI(前年同期比)は、0.6と前回調査から9.4ポイント改善し、水面上に浮上した。業況判断DIがプラスになったのは、2015年第4期(10-12月)以来である。業種別にみると、流通商業で改善、建設業と製造業で大幅改善を示したものの、サービス業では大幅な悪化となっている。また、企業規模別では、20人以上50人未満規模でほぼ横ばいを示した以外は、10ポイント以上の大幅な改善となっている。
 景況感は改善を示してはいるものの、決して楽観視できるものではない。と言うのも、売上高、採算、業況水準には、景況感の改善と連動していない指標も存在するからである。たとえば、全体の売上高DIはマイナス6.7から0.0へと改善を示したが、採算DI、業況水準DIは、それぞれマイナス5.7からマイナス5.8、マイナス5.0からマイナス5.2と前回調査からほぼ横ばいの推移でとどまっている。
 業種別にみれば、売上高DIは、サービス業を除いて改善を示し、採算DIは、製造業と流通商業で改善を示す一方で、建設業で悪化、サービス業で大幅な悪化、業況水準DIでは、製造業で大幅な改善、建設業で横ばい、流通商業とサービス業では悪化を示している。また、規模別に各指標とみると、売上高DIは相対的に規模が大きくなるほど改善幅が大きくなっているのに対し、採算水準DIでは規模が大きくなるほど悪化幅が大きくなり、業況水準DIでは、20人以上50人未満規模企業が大幅な悪化を示したほか、100人以上規模でマイナス水準であるなど、まだら模様な結果となっている。次期見通しに関しては、全体では今期と同様改善の見通しが続くものの、業種別、規模別に細かくみると好転、悪化の指標が混在していることから、さらに動向を注視していく必要があると考えている。
 今期の景況感の改善の要因を見ていくと、一人当たり売上高、付加価値ともにマイナスでの推移であるが改善を示したことが大きいと思われる。他方で、懸念されるのは仕入単価DIと販売単価DIの推移である。販売単価DIは4.0ポイントの上昇を示したが、仕入単価DIはそれを上回る7.1ポイントの上昇となっており、両DIのギャップが2016年第4期から拡大を続けている。このギャップが縮小傾向を占めるようになると、景況感の改善もより明確になると思われる。
 また、今期の経営上の問題については、前回調査まで急速に高まり続けていた「従業員の不足」、「熟練技術者の確保難」が一段落し、従来通りの「同業者間の価格競争の激化」、「民間需要の停滞」が最も高い割合となっている。しかし、問題点のいずれの項目も30%を上回ってはいないということが今期の特徴である。「人材の確保が困難である」というコメントが、「新卒者の定着」、「社員教育」とともに「経営上の力点」でひと際目を引くようになっている。「人」に関する問題が、今後も中小企業経営の最重要課題に上がることになるだろう。

≪景況調査について≫
○ 景況調査は、回答者の意識・マインドを基に景気動向を分析する調査です。
○ 特に、同友会が実施する景況調査は、経営者の意識を反映するものであるため、景気動向がはっきりと表れやすいと言われています。
○ 景況動向、および「次期見通し」を自社の経営指針等の見直し等に活用してください。

≪DI値について≫
○ DI 値は、「良い」と回答した割合(%)から「悪い」と回答した割合(%)を引いた数値
○ 「良い」と回答した企業が多ければ多いほどDI は高水準で推移するが、その逆もしかり。
○ 景況調査では、(1)DI 値の水準(プラスかマイナスか、また水準はどの程度か) 、 (2)前回調 査からの好転幅、悪化幅の大きさを主に見ていきます。
○ DI値の変化幅について、
@1ポイント以内の場合:「ほぼ横ばい」と表現します。
A1〜5ポイントの場合:「やや」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。
B10ポイント以上の場合:「大幅な」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。

【回答企業数について】
全体で180社(札幌89、帯広24、旭川11、函館10、釧路19、北見6、日胆13、小樽8)
【業種別】建設業:36、製造業:47、流通商業:71、サービス業:25、その他:1
【規模別】20人未満:61、20人以上50人未満:61、50人以上100人未満:30、100人以上:21、不明:7

回答企業数

1. 全体の動向
1-1. 業況判断DI(前年同期比)は9.4Ptの改善:▲8.9から0.9へ
※他調査(日銀短観等)との比較:いずれの調査においても改善しているが、本調査の改善幅が大きい。
→次期見通し:日銀短観では悪化見通しであるのに対し、本調査では「ほぼ横ばい」見通しである。
業況判断DIの推移
1-2.売上高DI、採算DI、採算水準、業況水準(前年同期比)
【売上高】6.7Ptの改善(▲6.7→0.0)(次期:6.4Ptの改善(0.0→6.4)
【採 算】ほぼ横ばい(▲5.7→▲5.8)(次期:4.6Ptのやや改善見通し;▲5.8→▲1.3)
【採算水準】前回調査から9.1Ptの改善(16.5→25.6)
【業況水準】ほぼ横ばい(▲5.0→▲5.2)(次期:5.7Ptの改善(▲5.2→0.6)
売上高DI・採算DI・採算水準DI・業況判断DI・業況水準DIの推移
1-3.仕入・販売単価、1人当たり売上高、1人当たり付加価値額
・仕入単価DI:前回調査から7.1Ptの上昇(25.0→32.1)
・販売単価DI:前回調査から4.0Ptのやや上昇(▲5.8→▲1.8)
※仕入単価DIと販売単価DIのギャップは33.9に、2017年に入ってから拡大持続
仕入単価・販売単価DI(前年同期比)
1-4.1人当たり売上高、付加価値額
・1人当たり売上高:▲15.6→▲6.9(前回調査より8.8.Ptの上昇)
・1人当たり付加価値額:▲16.9→▲6.4(前回調査より10.5Ptの大幅な上昇)
1人当たり売上高・付加価値(前年同期比)
1-5.人手の過不足、資金繰り、設備の過不足
【人手の過不足】不足感の更新が続く(54.0)、他方で過剰感も16年3期から上昇中。
人手の過不足
【資金繰りの状況】順調が初めて50%を上回る。余裕感と窮屈感の後退。
資金繰りの状況
【設備の過不足】ほぼ横ばい推移
設備の過不足
2.業種別動向
2-1.業況判断:サービス業以外、とりわけ建設業、製造業で大幅な改善を示すが、サービス業は大幅な悪化
建設業:23.5Ptの大幅な改善(▲8.8→14.7)、製造業:12.8Ptの大幅な改善(▲17.1→▲4.3)
流通商業:6.2Ptの改善(▲7.7→▲1.4)、サービス業:10.0Ptの大幅な悪化(5.9→▲4.2)
次期見通し:全体ではほぼ横ばい、建設業で悪化、サービス業でやや悪化見通し;流通商業の緩やかな改善
→次期見通しDI(建設業:5.9、製造業:2.1、流通商業:1.4、サービス業:▲8.3)
業種別状況判断
2-2.売上高:建設業での大幅な改善、サービス業を除いて改善
建設業:11.4Ptの大幅な改善(▲11.4→0.0)、製造業:9.4Ptの改善(▲7.3→2.1)
流通商業:3.2Ptのやや改善(▲9.0→▲5.7)、サービス業:3.8Ptのやや悪化(15.8→12.0)
次期見通し:建設業とサービス業で変化なしも、全体では改善の見通し
→(建設業:0.0、製造業:13.0、流通商業:3.0、サービス:12.0)
業種別売上高(前年同期比)
2-3.採算:サービス業で大幅な悪化が目立つ
建設業:6.0Ptの悪化(2.9→▲3.0)、製造業:4.7Ptのやや改善(▲22.5→▲17.8)
流通商業:6.2Ptの改善(▲9.2→▲3.0)、サービス業:23.6Ptの大幅な悪化(31.6→8.0)
次期見通し:建設業、サービス業でやや悪化見通し(建設業は3期連続悪化見通し)
→(建設業:▲6.7、製造業:2.3、流通商業:▲1.6、サービス:4.5)
業種別採算(前年同期比)
2-4.採算の水準:建設業、製造業で大幅な改善、サービス業で大幅な悪化
建設業:21.2Ptの大幅な改善(14.3→35.5)、製造業:35.7Ptの大幅な改善(▲5.7→30.0)
流通商業:ほぼ横ばい(25.0→25.8)、サービス業:42.1Ptの大幅な悪化(46.7→4.5)
業種別採算の水準
2-5.業況水準:製造業での大幅改善、流通商業、サービス業での悪化
建設業:横ばい推移(5.9→5.9)、製造業:15.9Ptの大幅な改善(▲24.4→▲8.5)
流通商業:8.8Ptの悪化(▲1.5→▲10.3)、サービス業:5.9Ptの悪化(5.9→0.0)
次期見通し:建設業を除いて改善見通し
→(建設業:2.9、製造業:▲6.4、流通商業:1.5、サービス業:8.3)
業種別業況水準(前年同期比)
2-6.人手の過不足、資金繰り、設備の過不足
【人手の過不足】建設業、サービス業で▲50台(前回同様)。他の業種でも▲30〜40台。人手不足が顕著
業種別・人手の過不足
【資金繰りの状況】サービス業で大幅な悪化を示した以外は、堅調に推移?
業種別・資金繰り
【設備の過不足】サービス業で不足感の高止まり継続、他業種では改善。
業種別・設備の過不足
3.規模別動向
3-1.業況判断:全規模層で改善(但し、20人以上50人以上規模はほぼ横ばい)、かつ改善幅は大きい
20人未満:12.3Ptの大幅な改善(▲12.3→0.0)、20〜50人:ほぼ横ばい(▲3.7→▲3.4)
50〜100人:17.4Ptの大幅な改善(▲7.4→10.0)、100人以上:14.0Ptの改善(▲18.8→▲4.8)
次期見通し:20人以上50人未満規模のみ大幅な改善見通し、20人未満、100人以上規模での悪化見通し
→次期見通しDI(20人未満:▲10.0、20〜50人:6.9、50〜100人:13.3、100人以上:▲9.5)
規模別状況判断
3-2.売上高:20人未満規模層を除いて改善(規模が大きい方が改善幅が大きい)
20人未満:1.6Ptのやや悪化(▲6.8→▲8.3)、20〜50人:6.5Ptの改善(1.8→8.3)
50〜100人:21.1Ptの大幅な改善(▲10.7→10.3)、100人以上:10.7Ptの大幅な改善(▲25.0→▲14.3)
次期見通し:全体的に改善基調(20-50人規模層はほぼ横ばい)
→(20人未満:▲7.0、20〜50人:8.2、50〜100人:24.1、100人以上:▲5.0)
規模別売上高(前年同期比)
3-3.採算:50人以上規模で改善幅が大きく、50人未満規模では悪化
20人未満:7.3Ptの悪化(▲3.4→▲10.7)、20〜50人:8.7Ptの悪化(1.9→▲6.9)
50〜100人:10.6Ptの大幅な改善(▲3.7→6.9)、100人以上:23.3Ptの大幅な改善(▲33.3→▲10.0)
次期見通し:緩やかではあるが、全体的に改善の見通し
→(20人未満:▲4.2、20〜50人:▲6.9、50〜100人:10.7、100人以上:23.3)
規模別採算(前年同期比)
3-4.採算の水準:全体では9.1Ptの改善だが、50人以上規模での悪化が目立つ
20人未満:26.6Ptの大幅な改善(3.8→30.4)、20〜50人:ほぼ横ばい(6.5→5.8)
50〜100人:11.5Ptの大幅な悪化(43.5→32.0)、100人以上:8.3Ptの悪化(53.3→45.0)
規模別採算の水準
3-5.業況水準:20人以上50人未満を除いて改善、20人以上50人未満規模は大幅な悪化
20人未満:10.2Ptの大幅な改善(▲10.2→0.0)、20〜50人:13.9Ptの大幅な悪化(1.9→▲12.1)
50〜100人:14.1Ptの大幅な改善(▲7.4→6.7)、100人以上:1.5Ptのやや改善(▲6.3→▲4.8)
次期見通し:20人未満規模を除いて改善の見通し
→(20人未満:▲5.1、20〜50人:▲1.7、50〜100人:20.0、100人以上:0.0)
規模別状況水準(前年同期比)
3-6.人手の過不足、資金繰り、設備の過不足
【人手の過不足】100人以上規模での著しい不足感は緩和(▲73.3→▲47.6)
規模別・人手の過不足
【資金繰りの状況】全体として10-20台で推移
規模別・資金繰り
【設備の過不足】50人以上100未満規模で不足感の高止まり
規模別・設備の過不足
4.経営上の問題点、次期の経営上の力点
【経営上の問題点】
高まり続けていた「従業員の不足」が大きく低下した。今期の特徴は、珍しく30%を上回る項目がないということである。項目が分散したという印象か。上位3項目は、「民間需要の停滞」(29.8%)、「同業者間の価格競争の激化」(29.2%)、「人件費の増加」(25.0%)、「従業員の不足」(25.0%)である。
経営上の問題点
【経営上の力点】
人材確保、社員教育の回答割合が大きく低下。上位3項目は、「新規受注の確保」(49.4%)、「付加価値の増大」(46.6%)、「人材確保」(35.2%)。
経営上の力点
経営上の努力・コメント一覧
経営上の努力・コメント一覧

前のページへ戻る ページ最上部へ戻る