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第11号 2016年10〜12月期 北海道同友会 景況調査報告
第11号
北海道中小企業家同友会景況調査報告
(2016年10〜12月期)
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文責:大貝健二
札幌市豊平区旭町4-1-40北海学園大学経済学部内
TEL:011-841-1161
2期連続改善を示すも、一過性の可能性
―次期見通しは軒並み悪化、世界情勢にも注視を―
 北海道中小企業家同友会2016 年第4 期(10〜12 月)の業況判断DI(前年同期比)は、前回調査から5.6 ポイントの改善を示し、マイナス3.6 となった。2016 年第2 期をボトムに、2期連続の改善である。今期の改善は、建設業と製造業における景況感の改善によるところが大きいが、なかでも建設業では23.2 ポイントの大幅な改善を示している。また、今期の売上高、採算、業況水準等をみると、前回調査の好転と悪化が入り乱れた状況から脱して全体的に好転を示しており、景況感の改善はより明確であると言ってもよいだろう。
 しかし、業況判断や売上高DI、採算DI では、100 人以上規模層で大きく後退、悪化を示しており、全体の結果とは大きく異なる。それに加えて、次期見通しに関しては、すべての指標で悪化する見通しとなっている。景況感の改善は一過性である可能性が高く、次期の景況感の動向に注視が必要である。
 今期の「経営上の問題点」をみると、「民間需要の停滞」の回答割合が最も高く、さらに「同業者間の価格競争の激化」の割合が高まっている。景気後退の兆しが見え始めていることに注意が必要である。他方で、今期調査においても、「人件費の増加」、「従業員の不足」、「熟練技術者の確保難」といった「人」に関連する項目の回答割合が高止まりを示している。統計上、若年労働力不足は将来も改善されないことをリアルに見すえ、人材の確保と育成に一層の注力が必要である。あわせて省力化投資や、同業・異業種との連携などの検討も求められる。
 最後に、今期の自由記述を紹介しておく。「売掛金の現金回収比率の向上。人件費以外の経費節減。社員の社外研修の積極化。経営理念を全社員に認識させて、集団としてパワーアップを図っていく。」(札幌・流通商業)、「ここ3年で国立大学卒生を3名採用したことで会社全体のモチベーションが向上し、社内体制も安定化してきた」(札幌・建設業)。

≪景況調査について≫
○ 景況調査は、回答者の意識・マインドを基に景気動向を分析する調査です。
○ 特に、同友会が実施する景況調査は、経営者の意識を反映するものであるため、景気動向がはっきりと表れやすいと言われています。
○ 景況動向、および「次期見通し」を自社の経営指針等の見直し等に活用してください。

≪DI値について≫
○ DI 値は、「良い」と回答した割合(%)から「悪い」と回答した割合(%)を引いた数値
○ 「良い」と回答した企業が多ければ多いほどDI は高水準で推移するが、その逆もしかり。
○ 景況調査では、(1)DI 値の水準(プラスかマイナスか、また水準はどの程度か) 、 (2)前回調 査からの好転幅、悪化幅の大きさを主に見ていきます。
○ DI値の変化幅について、
@1ポイント以内の場合:「ほぼ横ばい」と表現します。
A1〜5ポイントの場合:「やや」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。
B10ポイント以上の場合:「大幅な」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。

【回答企業数について】
全体で170 社(札幌81、帯広22、旭川11、函館10、釧路19、北見6、日胆15、小樽6、不明0)
【業種別】建設業:39、製造業:37、流通商業:68、サービス業:25、その他:1
【規模別】20 人未満:54、20 人以上50 人未満:60、50 人以上100 人未満:31、100 人以上:19、不明:6

1. 業況判断DI(前年同期比)は5.6Pt の改善(5ポイント以上の改善は、15年3期以来):▲9.2 から▲3.6 へ
※他調査(日銀短観等)との比較:改善傾向とはいえ、他調査を下回って推移
→次期見通しでは、すべての調査において悪化見通しとなっている。
業況判断DIの推移
1-2.業種別業況判断:サービス業のみ大幅な悪化、建設業の改善幅が大きいことが特徴
建設業:23.2Ptの大幅な改善(▲10.0→13.2)、製造業:8.9Ptの改善(▲11.6→▲2.8)
流通商業:4.0Ptのやや改善(▲12.9→▲8.8)、サービス業:15.3Ptの大幅な悪化(3.3→▲12.0)
次期見通し:建設業で大幅な悪化、サービス業で大幅な改善、流通商業で持続的な改善見通し
→次期見通しDI(建設業:▲5.3、製造業:▲11.1、流通商業:▲3.0、サービス業:▲0.0)
業種別業況判断
1-3.規模別業況判断 :100人以上規模層を除いて改善、20人以上50人未満、50人以上100人未満は水面上へ
20人未満:3.9Ptのやや改善(▲13.6→▲9.6)、20〜50人:11.1Ptの大幅な改善(▲4.4→6.7)
50〜100人:6.8Ptの改善(▲3.6→3.2)、100人以上:8.1Ptの悪化(▲18.2→▲26.3)
次期見通し:50人以上規模の各層で改善見通し、50人未満の各層で悪化見通し
→次期見通しDI(20人未満:▲19.6、20〜50人:1.7、50〜100人:6.5、100人以上:▲15.8)
規模別業況判断
2.売上高DI、採算DI、採算水準、業況水準(前年同期比)
【売上高】全体:12.6Ptの大幅な改善(▲13.8→▲1.2)(次期:6.6Ptの悪化(▲1.2→▲7.8)
【採 算】全体:8.8Ptの改善(▲10.0→▲1.2)(次期:13.7Ptの大幅な悪化見通し;▲1.2→▲14.9)
【採算水準】全体:9.3tの改善(38.7→47.9)
【業況水準】全体:8.4Ptの改善(▲5.4→3.0)(次期:15.5Ptの大幅な悪化(3.0→▲12.5)
売上高DI、採算DI、採算水準DI、業況判断DI、業況水準DIの推移
2-1.業種別売上高:建設業、流通商業で大幅な改善、製造業はほぼ横ばい、サービス業はやや改善にとどまる
建設業:30.1Ptの大幅な改善(▲25.0→5.1)、製造業:ほぼ横ばい(▲9.1→▲8.3)
流通商業:15.1Ptの大幅な改善(▲18.1→▲2.9)、サービス業:4.0Ptのやや改善(0.0→4.0)
次期見通し:製造業を除いて悪化見通し、なかでも建設業で大幅な悪化見通し
→(建設業:▲20.5、製造業:0.0、流通商業:▲0.1、サービス:▲8.0)
業種別売上高
2-2.規模別売上高: 50人未満規模(20人未満、20-50人)で大幅な改善、50人以上では悪化
20人未満:12.1Ptの大幅な改善(▲19.7→▲7.5)、20〜50人:23.0Ptの大幅な改善(▲13.0→10.0)
50〜100人:3.0Ptのやや悪化(▲3.4→▲6.5)、100人以上:12.0Ptの大幅な悪化(▲9.1→▲21.1)
次期見通し:100以上規模を除いて悪化見通し
→(20人未満:▲7.8、20〜50人:▲13.5、50〜100人:▲3.4、100人以上:15.8)
規模別売上高
2-3.業種別採算:建設業で2期連続の大幅改善、流通商業でほぼ横ばいのほか、製造業、サービス業でも改善
建設業:20.9Ptの大幅な改善(▲15.0→5.9)、製造業:15.1Ptの大幅な改善(▲12.2→2.9)
流通商業:ほぼ横ばい(▲8.8→▲9.1)、サービス業:6.9Ptの改善(▲6.9→0.0)
次期見通し:全業種で悪化見通し、流通商業を除き軒並み10Pt以上悪化する見通し(製造業は20Pt以上)
→(建設業:▲12.1、製造業:▲20.6、流通商業:▲11.3、サービス:▲16.7)
業種別採算
2-4.規模別採算:100人以上規模を除いて改善(20-50人規模で大幅な改善)、100人以上規模では大幅な悪化
20人未満:8.6Ptの改善(▲8.6→0.0)、20〜50人:14.0Ptの大幅な改善(▲10.4→3.6)
50〜100人:4.4Ptのやや改善(▲11.1→▲6.7)、100人以上:11.2Ptの大幅な悪化(▲4.5→▲15.8)
次期見通し:全規模層で悪化見通し、さらに100人以上規模層を除いて大幅な悪化見通し
→(20人未満:▲18.4、20〜50人:▲7.5、50〜100人:▲20.0、100人以上:▲22.2)
規模別採算
2-5.業種別採算水準:流通商業を除いて大幅な改善、流通商業でやや悪化
建設業:24.0Ptの大幅な改善(15.4→39.4)、製造業:13.6Ptの大幅な改善(29.7→43.3)
流通商業:2.5Ptのやや悪化(51.6→49.2)、サービス業:10.9Ptの大幅な改善(50.0→60.9)
業種別採算の水準
2-6.規模別採算の水準:全規模層で改善、うち20人未満、50人以上100人未満、100人以上規模で大幅な改善
20人未満:15.0Ptの大幅な改善(25.5→40.4)、20〜50人:1.4Ptのやや改善(47.7→49.1)
50〜100人:12.4Ptの大幅な改善(26.9→39.3)、100人以上:16.1Ptの大幅な改善(70.6→86.7)
規模別採算の水準
2-7.業種別業況水準:サービス業を除いて改善、とりわけ建設業、製造業の改善幅が大きい
建設業:23.0Ptの大幅な改善(▲2.5→23.0)、製造業:20.4Ptの改善(▲9.3→11.1)
流通商業:4.3Ptのやや改善(▲8.7→▲4.4)、サービス業:12.5Ptの大幅な悪化(0.0→▲12.5)
次期見通し:全業種で悪化見通し、特に、流通商業を除いて大幅な悪化見通し
→(建設業:▲2.6、製造業:▲16.7、流通商業:▲7.4、サービス業:▲12.5)
業種別業況の水準
2-8.規模別業況水準:20人以上50人未満規模を除いて大幅な改善
20人未満:14.0Ptの大幅な改善(▲12.1→1.9)、20〜50人:5.9Ptの悪化(5.9→0.0)
50〜100人:14.3Ptの大幅な改善(▲14.3→0.0)、100人以上:24.2Ptの大幅な改善(▲13.6→10.5)
次期見通し:全規模層で大幅な悪化見通し
→(20人未満:▲15.1、20〜50人:▲11.9、50〜100人:▲22.6、100人以上:0.0)
規模別業況水準
3.仕入・販売単価、1人当たり売上高、1人当たり付加価値額
3-1-1.
仕入単価DI:前回調査から7.3Pt上昇(3.9→11.3)
販売単価DI:前回調査から3.9Pt上昇(▲5.1→▲1.2)
※仕入単価DIの増加分ほどに販売単価DIは上昇していない
仕入単価・販売単価DI
3-1-2.業種別仕入単価DI
建設業と製造業ではわずかな上昇にとどまるが、流通商業、サービス業で10Pt以上の大幅な上昇を示した
業種別・仕入単価DI
3-1-3.規模別仕入単価DI
20人未満規模、50人以上100人未満規模で大幅な上昇、100人以上は反対にやや低下
規模別・仕入単価DIの推移
3-1-4.業種別販売単価DI
製造業でやや低下した以外は上昇。とりわけサービス業で10Pt以上の大幅な上昇。
業種別・販売単価DIの推移
3-1-5.規模別販売単価DI
20人未満規模でほぼ横ばい。他の規模層では上昇。100人以上規模では大幅な上昇。
規模別・販売単価DIの推移
3-2-1.
1人当たり売上高:▲10.6→3.0(前回調査より13.6Pt上昇)
1人当たり付加価値額:▲12.4→▲3.0(前回調査より9.4Pt上昇)
1人当たり売上高・付加価値
3-2-2.業種別1人当たり売上高DI
全業種で上昇するが、製造業、流通商業では大幅な上昇、建設業、サービス業は微増にとどまる
業種別・1人当たり売上高DIの推移
3-2-3.規模別1人当たり売上高DI
100人以上規模を除いて10Pt以上の上昇、100人以上では、やや低下
規模別・1人当たり売上高DIの推移
3-2-4.業種別1人当たり付加価値額DI
製造業、流通商業で10Pt以上の上昇、建設業で大幅なマイナス、サービス業で横ばい
業種別・1人当たり付加価値額DIの推移
3-2-5.規模別1人当たり付加価値額DI
20人未満、100人以上で大幅な上昇、20人以上100人未満規模層でやや上昇
規模別・1人当たり付加価値額DIの推移
4.人手の過不足、資金繰りの状況、設備の過不足
【人手の過不足】不足感が(不足+やや不足)が50%を上回る
人手の過不足
[業種別]建設業に加え、サービス業も-60水準へ。他の業種も不足感は-40水準である。
業種別・人手の過不足
[規模別]全体で不足感が強まる、100人以上規模での著しい不足感が4期連続で続いている(-68.4)。
規模別・人手の過不足
【資金繰りの状況】窮屈感(窮屈+やや窮屈)がやや後退し、「順調」と「余裕感」が高まる。
資金繰りの状況
[業種別]建設業で後退、他業種ではDIが上昇(余裕感の高まり)を示す。
業種別・資金繰り
[規模別]20人未満、100人以上規模で上昇を示す、50人以上100人未満で低下した。
規模別・資金繰り
【設備の過不足】適正感のやや後退、不足感が微増。
設備の過不足
[業種別]全体で水面下推移。そのなかで、建設業で大幅に低下
業種別・設備の過不足
[規模別]水面下推移ではあるが、100人以上規模で3期連続の上昇
規模別・設備の過不足
5.経営上の問題点、次期の経営上の力点
【経営上の問題点】
「民間需要の停滞(37.8%)、「同業者間の価格競争の激化」(36.0%)、「従業員の不足」(31.1%)が上位3項目。前回調査と比べて、競争・需要面での回答割合が上昇し景気後退に注意。また、「人」に関する割合も、低下傾向は見られない。
経営上の問題点
〔業種別経営上の問題点〕
建設業:熟練技術者の確保難、下請業者の確保難、官公需要の停滞(上位3項目)
製造業:人件費の増加、民間需要の停滞、熟練技術者の確保難
 →突出している項目:仕入単価の上昇、管理費等間接経費の増加、販売先からの値下げ要請
流通商業:同業者間の価格競争の激化、民間需要の停滞、従業員の不足(上位3項目)
 →突出している項目:取引先の減少
サービス業:従業員の不足、民間需要の停滞、同業者間の価格競争の激化
 →仕入単価の上昇、管理費等間接経費の増加
業種別・経営上の問題点
〔規模別別経営上の問題点〕
20人未満:民間需要の停滞、同業者間の価格競争の激化、従業員の不足
 →突出項目:新規参入者の増加、取引先の減少
20人以上50人未満:民間需要の停滞、人件費の増加、同業者間の価格競争の激化
50人以上100人未満:同業者相互の価格競争の激化、人件費の増加、民間需要の停滞、従業員の不足
 →突出項目:大企業の進出による競争の激化、官公需要の停滞、管理費等間接経費の増加、金利負担の増加
100人以上:同業者間の価格競争の激化、従業員の不足、民間需要の停滞、人件費の増加、熟練技術者の確保難
 →突出項目:下請業者の確保難、販売先からの値下げ要請、その他
規模別・経営上の問題点
【経営上の力点】
新規受注(顧客)の確保(53.6%)、人材確保(51.2%)、社員教育(42.8%)が上位3項目
経営上の力点
〔業種別経営上の力点〕
建設業:人材確保、新規受注の確保、社員教育(突出:人材確保)
製造業:新規受注の確保、付加価値の増大、社員教育(突出:機械化促進、研究開発)
流通商業:新規受注の確保、人材確保、付加価値の増大、社員教育
サービス業:人材確保、新規受注の確保、社員教育(人件費以外の経費節減、情報力強化)
業種別・経営上の力点
〔規模別別経営上の力点〕
20人未満:新規受注の確保、付加価値の増大、人材確保
20-50人:新規受注の確保、人材確保、社員教育
50-100人:人材確保、社員教育、新規受注の確保(突出:人件費以外の経費節減)
100人以上:人材確保、社員教育、新規受注の確保
規模別・経営上の力点
経営上の努力・コメント一覧
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