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第10号 2016年7〜9月期 北海道同友会 景況調査報告
第10号
北海道中小企業家同友会景況調査報告
(2016年7〜9月期)
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文責:大貝健二
札幌市豊平区旭町4-1-40北海学園大学経済学部内
TEL:011-841-1161
景況感は改善を示すも、不安定感は拭えず
―人手、人材不足問題を乗り越える取り組みを―
 北海道中小企業家同友会2016年第3期(7〜9月)の業況判断DI(前年同期比)は、マイナス9.2と、前回調査から4.0ポイントの「やや改善」となった。今期の景況感の改善は、建設業とサービス業での大幅な景況感の改善が、全体を底上げした結果となった(建設業:マイナス26.5→マイナス10.0、サービス業:マイナス6.7→3.3)。今期の売上高、採算、業況水準等の指標をみると、全体では改善傾向を示してはいるが、いずれも水面下での弱い動きにとどまる。また、業種別、規模別にみれば、と悪化それぞれの指標が入り乱れており、景況感の改善が不安定なものであるとの印象がぬぐえない。さらに、次期見通しに関しては、業況判断において、今期大幅な改善を示した建設業とサービス業で悪化見通しとなっていることに加え、8月下旬に相次いだ台風の影響がどこまで現れてくるのか、次期の景況感の動向に注視が必要である。
 今期調査の「経営上の問題点」では、「民間需要の停滞」の回答割合が最も高いが、景気後退局面で高くなる「同業者間の価格競争の激化」や「官公需要の停滞」の割合は低下している。他方で、「人件費の増加」、「従業員の不足」、「熟練技術者の確保難」、「下請業者の確保難」といった「人」に関連する項目の回答割合が軒並み上昇している。最低賃金の引上げが中小企業経営に対して影響を与えていることに加え、とにかく人の確保が困難である状況がうかがえる。人手不足が継続的に続く状況下でいかにして人材を確保するか、同友会運動として知恵を出し合いながら、困難を乗り越えていくことが求められているといえよう。
 最後に、今期の自由記述を紹介しておく。「世代交代の推進と世代交代にともなう認識の一致を図り、若返りにともなうフォロー体制を充実させるべく検討している」(札幌・流通商業)、「台風の度重なる来襲。降雨日、雨量の増加等による工事条件、成果は良くない。今後少しずつでも回復していけるよう検討している」(釧路・建設業)

≪景況調査について≫
○ 景況調査は、回答者の意識・マインドを基に景気動向を分析する調査です。
○ 特に、同友会が実施する景況調査は、経営者の意識を反映するものであるため、景気動向がはっきりと表れやすいと言われています。
○ 景況動向、および「次期見通し」を自社の経営指針等の見直し等に活用してください。

≪DI値について≫
○ DI 値は、「良い」と回答した割合(%)から「悪い」と回答した割合(%)を引いた数値
○ 「良い」と回答した企業が多ければ多いほどDI は高水準で推移するが、その逆もしかり。
○ 景況調査では、(1)DI 値の水準(プラスかマイナスか、また水準はどの程度か) 、 (2)前回調 査からの好転幅、悪化幅の大きさを主に見ていきます。
○ DI値の変化幅について、
@1ポイント以内の場合:「ほぼ横ばい」と表現します。
A1〜5ポイントの場合:「やや」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。
B10ポイント以上の場合:「大幅な」という言葉が、好転・悪化の前に付きます。

1. 業況判断DI(前年同期比)は4.0Ptのやや改善(3期連続の悪化は免れる):▲13.2から▲9.2へ
※他調査(日銀短観等)との比較:北海道同友会調査の落ち込みが目立つ
→次期見通しでは、他調査同様、やや悪化の見通しとなっている
業況判断DIの推移
1-2.業種別業況判断
建設業:16.5Ptの大幅な改善(▲26.5→▲10.0)、製造業:7.1Ptの改善(▲18.8→▲11.6)
流通商業:5.0Ptの悪化(▲7.9→▲12.9)、サービス業:10.0Ptの大幅な改善(▲6.7→3.3)
次期見通し:業種ごとの見通しの差異が大きい。建設業、サービス業で悪化見通し
→次期見通しDI(建設業:▲17.5、製造業:▲9.3、流通商業:▲5.0、サービス業:▲10.3)
業種別業況判断
1-3.規模別業況判断
20人未満:5.6Ptの改善(▲19.1→▲13.6)、20〜50人:8.8Ptの改善(▲13.2→▲4.4)
50〜100人:3.1Ptのやや改善(▲6.7→▲3.6)、100人以上:18.2Ptの大幅な悪化(0.0→▲18.2)
次期見通し:20人以上50人未満規模のみ大幅な悪化、それ以外の規模は横ばいか改善見通し
→次期見通しDI(20人未満:▲8.5、20〜50人:▲22.1、50〜100人:▲3.6、100人以上:4.5)
規模別業況判断
2.売上高DI、採算DI、採算水準、業況水準(前年同期比)
【売上高】全体:2.5Ptの悪化(▲11.3→▲13.8)(次期:9.4Ptの改善(▲13.8→▲4.4)
【採 算】全体:2.6Ptのやや改善(▲12.6→▲10.0)(次期:4.3Ptのやや改善見通し;▲10.0→▲5.7)
【採算水準】全体:9.9Ptの改善(28.8→38.7)
【業況水準】全体:9.7Ptの改善(▲15.2→▲5.4)(次期:4.4Ptのやや悪化(▲5.4→▲9.8)
売上高DI、採算DI、採算水準、業況水準
2-1.業種別売上高:製造業で改善、他の業種は程度の差はあるが悪化(サービス業を除いて水面下推移)
建設業:ほぼ横ばい(▲24.3→▲25.0)、製造業:9.3Ptの改善(▲18.4→▲9.1)
流通商業:6.2Ptの悪化(▲11.8→▲18.1)、サービス業:10.0Ptの大幅な悪化(10.0→0.0)
次期見通し:建設業、流通商業で大幅な改善見通し
→(建設業:▲2.7、製造業:▲9.5、流通商業:▲7.0、サービス:3.3)
業種別売上高
2-2.規模別売上高:20人未満規模で水面下推移ながら改善、他の規模層では悪化
20人未満:6.0Ptの改善(▲25.7→▲19.7)、20〜50人:8.8Ptの悪化(▲4.3→▲13.0)
50〜100人:3.4Ptのやや悪化(0.0→▲3.4)、100人以上:9.1Ptの悪化(0.0→▲9.1)
次期見通し:全規模層で改善見通し、規模が大きくなるほど、改善幅も大きい
→(20人未満:▲10.3、20〜50人:▲6.1、50〜100人:6.9、100人以上:4.5)
規模別売上高
2-3.業種別採算:建設業で大幅な改善、サービス業で大幅な悪化、製造業、流通商業でやや改善
建設業:16.4Ptの大幅な改善(▲31.4→▲15.0)、製造業:4.1のやや改善(▲16.3→▲12.2)
流通商業:1.6Ptのやや改善(▲10.4→▲8.8)、サービス業:10.6Ptの大幅な悪化(3.7→▲6.9)
次期見通し:全業種で改善見通し、とりわけ建設業で改善見通し幅が大きい →(建設業:0.0、製造業:▲5.3、流通商業:▲8.8、サービス:▲6.7)
業種別採算
2-4.規模別採算:20人未満規模で大幅な改善、50人以上100人未満規模で大幅な悪化
20人未満:16.8Ptの大幅な改善(▲25.4→▲8.6)、20〜50人:1.9Ptのやや悪化(▲8.6→▲10.4)
50〜100人:11.1Ptの大幅な悪化(0.0→▲11.1)、100人以上:ほぼ横ばい(▲4.8→▲4.5)
次期見通し:20人未満規模層を除いて改善見通し、とりわけ50人以上100人未満規模で大幅な改善見通し
→(20人未満:▲13.0、20〜50人:▲4.6、50〜100人:7.1、100人以上:0.0)
規模別採算
2-5.業種別採算水準:流通商業で大幅な改善、サービス業で改善、建設業でやや悪化、製造業で悪化
建設業:1.3Ptのやや悪化(16.7→15.4)、製造業:6.0Ptの悪化(35.7→29.7)
  流通商業:28.4Ptの大幅な改善(23.2→51.6)、サービス業:9.3Ptの改善(40.7→50.0)
業種別採算水準
2-6.規模別採算の水準:50人以上100人未満規模を除いて改善
20人未満:2.9Ptのやや改善(22.6→25.5)、20〜50人:24.3Ptの大幅な改善(23.4→47.7)
50〜100人:8.8Ptの悪化(35.7→26.9)、100人以上:8.1Ptの改善(62.5→70.6)
規模別採算の水準
2-7.業種別業況水準:全業種で改善、とりわけ建設業での改善幅が大きい
建設業:29.9Ptの大幅な改善(▲32.4→▲2.5)、製造業:5.0Ptの改善(▲14.3→▲9.3)
流通商業:7.1Ptの改善(▲15.8→▲8.7)、サービス業:3.3Ptのやや改善(▲3.3→0.0)
次期見通し:建設業とサービス業で悪化見通し、とりわけサービス業では大幅な悪化見通し
→(建設業:▲10.0、製造業:▲10.0、流通商業:▲8.7、サービス業:▲20.0)
業種別業況の水準
2-8.規模別業況水準:100人以上規模を除いて改善傾向、とりわけ20-50人規模層で改善幅が大きい
20人未満:2.4Ptのやや改善(▲14.5→▲12.1)、20〜50人:20.6Ptの大幅な改善(▲14.7→5.9)
50〜100人:5.7Ptの改善(▲20.0→▲14.3)、100人以上:4.1Ptのやや悪化(▲9.5→▲13.6)
次期見通し:20人未満規模を除いて改善見通し
→(20人未満:▲20.7、20〜50人:65.6、50〜100人:▲7.4、100人以上:0.0)
規模別業況水準
3.仕入・販売単価、1人当たり売上高、1人当たり付加価値額
3-1.
仕入単価DI:前回調査から6.4Pt低下(10.3→3.9)
販売単価DI:前回調査から1.9Pt上昇(▲7.0→▲5.1)
仕入単価・販売単価DI
3-2.
1人当たり売上高:▲9.9→▲10.6(前回調査より0.7Pt低下)
1人当たり付加価値額:▲9.5→▲12.4(前回調査より2.8Pt低下)
1人当たり売上高・付加価値
4.人手の過不足、資金繰りの状況、設備の過不足
【人手の過不足】過剰感(過剰+やや過剰)が8.3%→4.7%へ:全体として不足感が高い
人手の過不足
[業種別]建設業で不足感が顕著(前回から継続)(-64.3)、他の業種も不足感は-40水準である。
資金繰りの状況
[規模別]100人以上規模での著しい不足感が3期連続で続いている(-68.2)。
設備の過不足
【資金繰りの状況】余裕感(余裕+やや余裕)が後退し、「順調」割合が高まる。
資金繰りの状況
[業種別]全業種でDIは後退、とりわけサービス業で大幅な後退を示す。
業種別・資金繰りの状況
[規模別]20人未満規模で大幅な後退を示し、マイナス推移となった。
規模別・資金繰りの状況
【設備の過不足】過剰感、不足感ともに後退し、適正感が拡大する。
設備の過不足
[業種別]製造業では、今期で水面下ながら大幅に改善へ、流通商業で不足感が急速に高まりマイナスへ
業種別・設備の過不足
[規模別]特に大きな変化は見られない。
規模別・設備の過不足
4.経営上の問題点、次期の経営上の力点
【経営上の問題点】
「民間需要の停滞」(39.0%)、「従業員の不足」(33.5%)、「人件費の増加」(30.8%)が上位3項目。前回調査と比べて、競争・需要面での回答割合が低下、「熟練技術者の確保難」等も加えた「人」に関する割合が上昇。
経営上の問題点
【経営上の力点】
人材確保」(45.9%)、「社員教育」(45.4%)といった項目の割合が高まっている。
経営上の力点
経営上の努力・コメント一覧
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