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厳しさ続く経営環境、攻勢的な経営方針で難局を突破 調査データ・資料
厳しさ続く経営環境、攻勢的な経営方針で難局を突破〜道内中小企業の経営実態調査結果〜

 この調査は、北海道中小企業家同友会会員企業(会員数4,833社)の中から1,500社を地域業種を勘案して無作為抽出し、10月下旬にアンケートを発送、11月20日まで回答のあった323社についてまとめたものです。
 なお、回答企業の平均資本金(全道)は、3、843万円、平均従業員数(全道)36・8人となっています。

1、「10〜12月期」はさらに厳しくなると予想〜前年同期比の「売上動向」〜

 前年同期の「地域別売上動向」は第1表―aの通りです。それをもとに第1表―bの売上DI(「増加」企業の割合から「減少」企業の割合を差し引いた数値)でみると、全道で「4〜6月期実績」がマイナス25・8「7〜9月期実績」ではマイナス22・1とやや好転するものの、「10〜12月期予想」では28・6と再び悪化しています。
 一方「過去3カ年の売上DI」(第2表―b)をみると、2001年との比較では、「札幌」がややマイナス幅が減っていますが、「札幌以外」では「4―6月期」が悪化、「7―9月期」「10―12月期」はややマイナス幅縮少となっています。「札幌」に比べて、「札幌以外」がより厳しい状況にあることが伺われます。しかし、若干変化はあるものの、2002年の売上DI(全道)は、各期ともマイナス20台を大きく越えており、確かな景気回復の兆しは見えません。
 「業種別売上DI」(第3表―b)では、「小売業」「卸売業」のマイナス幅が大きく、消費不況とデフレの影響が色濃く反映した結果になっています。

2、「利益確保」が一層難しくなる

 「地域別経常利益DI」(第4表―b)をみると、全道で「4―6月期」マイナス23・5、「7―9月期」マイナス26,0、「10月―12月期」マイナス33,0と期を追うごとに悪化しています。長びく不況と競争激化の中で利益確保が、ますます困難になっていることがうかがわれます。
 「業種別経常利益DI」(第5表―b)では、「建設関連業」が各期ともマイナス35を越え、「10―12月期」にはマイナス37・3と各業界の中で最も悪くなっています。「運輸・倉庫業」は、「4―6月期」がマイナス40,0と各業界の中で最も悪かったものの、「7―9月期」マイナス27,3「10―12月期」マイナス27,3と若干好転しています。
 一方、「卸売業」は「4―6月期」がマイナス7,4、「7―9月期」マイナス20.0、「10―12月期」マイナス36,8と期を追うごとに急速に悪化しており注目されます。デフレの進行の中で、卸価格の切り下げを余儀なくされている卸売業の実態を示すものでしょう。「製造業」も期を追うごとに悪化の傾向にあります。
 「小売業」は、「売上DI」(第3表―b)が各業界の中で最も悪いのに対し、「経常利益DI」のマイナス幅は「売上DI」をかなり下廻っており、「利益重視」の傾向を強めているようです。

3、「景気は悪くなっている」との回答が64,8%に達する〜経営者の景況感〜

 「景気の現状について」(第6表―a・b)の質問では、「景気はむしろ悪くなっている」と回答した企業が全道で64,8%に達しています。とりわけ、小樽(75,0%)、日胆(75,0%)、釧根(70,0%)が70%を越え、函館が69.7%と70%に迫り、この4地域の経営環境の厳しさが目立っています。
 業種別にみると「景気はむしろ悪くなっている」と回答した企業は、「運輸・倉庫業」(81.8%)、「建設関連業」(73.8%)の二業種が極めて高く、続いて「製造業」が67,3%と70%に迫っています。

4、「販売価格・受注価格の下落」「売上不振」「人の問題」で悩む中小企業

 「経営上の悩み」(第7表―a・b)では、全道で「販売価格・受注価格の下落」(26,2%)「売上不振」(24,5%)「人件費の負担増」(12,2%)「あてになる人材不足」(12,1%)の順に多くなっています。
 地域別(第7表―a)にみると、「売上不振」が第1位となっている地域は、小樽(27,7%)、釧根(25,6%)、函館(24,4%)の3地域です。「人材不足」では、釧根(20,0%)、日胆(18,7%)が他の地域より高く、函館が「人件費の負担増」(16,7%)「資金繰り・資金調達難」(11,1%)が相対的に高いなど、地域によって若干の差があります。
 業種別(第7表―b)では、他の業種と比べて「建設関連業」が「販売価格・受注価格の下落」(29,2%)「資金繰り・資金調達難」(7,9%)、「製造業」が「売上不振」(27,7%)、「卸売業」が「人材不足」(17,1%)「代金回収悪化」(9,5%)、「運輸・倉庫業」が「人件費の負担増」(16,1%)「経費増加」(9,7%)、「サービス業」は「経費増加」(10,3%)が高くなっているなど、業種特有の悩みもあるようです。

5、商品力、営業力を高め利益率と売上の向上をめざす〜経営の重点方針〜

 「経営の重点方針」(第8表)をみると、全道で「特徴ある商品や選別受注で利益率を高める」(33,0%)が第1位に浮上し、「売上げ重視から利益率重視への転換」の兆しがうかがわれます。特に、「建設関連業」「卸売業」が、昨年より「利益率を高める」傾向を強めています。
 また、「小売業」「運輸・倉庫業」では、「営業力・商品力を強化し、売上を伸ばす」の割合が昨年よりかなり高くなっており、攻勢的な経営方針で難局を乗り切ろうという姿勢が感じられます。
 しっかりとした経営方針を確立し、社員のレベルアップをはかることができるかどうかが、企業の命運を分つ時代になったと言えるでしょう。また、国民が将来に希望が持て、中小企業が元気になる政策を望みたいものです。


※参考

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第2表-a 過去3ヵ年の「4月〜12月」地域別売上動向

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第3表-a 2002年4月〜12月の業種別売上動向

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第4表-a 2002年4月〜12月の地域別利益動向

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第5表-a 2002年4月〜12月の業種別利益動向
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