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激変する金融情勢と中小企業の対応 調査データ・資料
激変する金融情勢と中小企業の対応〜金融問題「緊急」アンケート調査結果〜

 北海道中小企業家同友会(代表理事 三神純一)では、昨年から会をあげて「地域にやさしい、望ましい金融システムの創造」をめざして「金融アセスメント法」制定運動に取り組んでまいりました。道議会と全道212市町村議会が当会の陳情の趣旨に沿った意見書を採択し、国の関係機関に送付するなど、かつてない盛り上がりを見せ、今年の3月28日には全国75万名の署名を携えて国会に請願しました。
 このアンケートは、金融環境の変化をリアルにつかみ、引き続き「地域経済にやさしい、望ましい金融システムの創造」の実現に向けて、粘り強く取り組んでいくために実施しました。この結果は、7月初めに当会会員企業(会員数4,896社)にアンケートを発送、7月19日までに回収された1,206社(回収率24.6%)についてまとめたものです。平均資本金、平均従業員数は、第1表の通りです。この種のアンケートは、業績の良い会社ほど早めに回答する傾向があります。実際、何とか黒字を確保している企業を含めて回答企業の71.8%は黒字企業であり(第2表参照)、この点を考慮すると実態はより厳しいと思われます。

1.回答企業の40.6%が金融機関の融資姿勢に変化を感じ、その中の過半数は融資条件が厳しくなっていることを実感

 「過去1年間で金融機関の融資姿勢に変化はあったか」との問いでは、全道の回答企業の40.6%が「変化あり」と答えています(第4表参照)。第5表をみると、その中で「運転資金の新規融資に厳しくなる」(32.6%)「金利の引き上げ要請」(25.6%)「保証協会の保証を求められた」(16.9%)「設備資金の融資に慎重」(10.8%)「保証協会の保証が受けにくくなった」(10.6%)「追加担保、保証人の要求」(10.1%)など、融資条件が厳しくなった企業が多くなっています。「ぜひ借りてほしいとの要請が強まった」と回答した企業は、44.2%(全回答企業のわずか18.0%)と半分以下であり、過半数の企業は融資条件が厳しくなっていることを示しています。しかも、融資姿勢に「変化あり」と回答した企業が473社なのに対し、第5表で複数回答したのべ企業数は779社と306社も上回っており、複数の厳しい条件を要求されている企業が多いことを伺わせます(第5表参照)。
 「業績別の融資姿勢の変化」(第6表)を見ると、「大幅黒字」「黒字横這い」「赤字から黒字になった」企業では、「ぜひ借りて欲しいとの要請」が20%を越えている反面、「何とか黒字」以下の企業では「運転資金の新規融資」が受けにくくなっているようです。「金利の引き上げ要請」が、黒字企業も含めて顕著になっており注目されます。これらの背景には、「ペイオフ部分解禁」による金融情勢の変化と「金融検査マニュアル」による金融庁検査で債務者区分がランクダウンされ、引当金の積み増しを余儀なくされるという地域金融機関側の事情もあるようです。「金融機関の融資姿勢の変化」で、「資金繰りが厳しくなった」と回答した企業が15.1%もあり、金融情勢は予断を許しません(第7表参照)。

2.過去二年間で22.2%の企業が、取引金融機関の破綻・合併を経験し、その中の26.4%がマイナスの影響を受ける〜良き相談相手になり、経営指針・人材力・技術力を評価する金融機関に〜

 「過去二年間で取引金融機関の破綻・合併の経験はあるか」(第8表)では、22.2%が「ある」と回答し26.4%が「引き継がれたが、条件は厳しくなった」などのマイナスの影響を受けています。
 「金融機関は多すぎるから、合併し規模の拡大をはかる必要がある」との立場から政策誘導がされていますが、地域と中小企業の実態を無視した地域金融機関の合併再編は、地域経済に混乱を招きかねません。
 「金融機関に望むこと」(第10表)を見ると、「担保だけでなく、経営指針・人材力・技術力を評価した融資を」(26.4%)「良き相談相手になってほしい」(22.4%)「適切なアドバイスを」(16.8%)「職員の知識と人間力のレベルアップ」(13.2%)が多くなっています。

3.約60%が「金融検査マニュアル」のダブルスタンダードを望み、54.3%が「ペイオフ全面解禁」延期を要望

 「金融政策のあり方」に対する質問では、金融庁の金融検査マニュアルについて「大企業も中小企業も同じ基準で評価すべきではない(ダブルスタンダード)」(59.6%)「金融検査マニュアル中小企業融資編をまとめたことは、一定の評価ができる」(49.2%)との声が多く、中小企業の実態に即した金融検査への期待が大きいことを示しています(第11表)。
 「ペイオフ解禁」については、回答企業の54.3%が「決済性預金の解禁延期」を望み、24.8%は「地方自治体の預金はペイオフ対象から外す」べきと答え、「全面解禁をすべき」との回答は18%にすぎません(第12表)。当会が進めている「金融アセスメント法」制定運動に関しては、「道議会と全道全市町村議会が意見書を採択した意味は大きい」と53.9%が高く評価し、さらに理解を広げて欲しいと願っています(第13表)。

4.景気が「良くなってきた実感はない」「悪くなっている」で93.1%、社員のレベルアップで難局を突破

 「景気の現状について」(第14表)は、全道で「良くなってきた実感はない」(52.5%)「悪くなっている」(40.6%)を合わせて93.1%になっており、「景気の底入れ」とはほど遠い状況です。とりわけ「札幌以外」の地域では、44.6%が「悪くなっている」と答えており深刻です。経営の重点方針(第15表)では、「社員のレベルアップをはかる」(26.1%)「売上げを伸ばす」(25.8%)「利益率を高める」(24.3%)が多く、「経営指針を確立し、社員のレベルアップをはかり、新しい需要を掘り起こす」ことで難局を突破していきたいとの思いが伝わってきます。
 「構造改革も、景気対策重点に政策変更をしないとデフレは悪化する」「日本経済の下支えをしている中小企業無視の金融経済政策は日本を滅ぼす」などの切実な意見もたくさん寄せられています。「赤字を出さない企業づくり」に全力をあげて取り組むことは当然ですが、個々の経営努力で経営体質の強化をはかるにも限界があります。政府には、国民の生活と中小企業を重視した政策への根本的転換を望みたいものです。


※参考

第1表 平均資本金、平均従業員数
第9表 取引金融機関の破綻・合併の影響
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