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経営実態調査結果 調査データ・資料
景気悪化の中で、売上減・利益減に苦しむ中小企業

 この調査は、北海道中小企業家同友会会員企業(会員数五、〇〇〇社)の中から、一、五〇〇社を地域業種を勘案して無作為抽出して二〇〇一年十月下旬にアンケートを発送、十一月二十日までに回答のあった三一〇社についてまとめたものです。
 なお、回答企業の平均資本金は三、一〇六万円、平均従業員数は四〇・〇人となっています。

「売上減少」企業の割合は、過去三カ年で最も高くなる	〜前年同期比の「売上動向」〜

 前年同期の「地域別売上動向」は 第一表―a の通りです。それをもとに売上DI(前年同期比「増加」企業の割合から「減少」企業の割合を差し引いた数値)をみると、全道で「四〜六月期実績」がマイナス二五・九、「七〜九月期実績」がマイナス三一・六、「十〜十二月期予想」三二・五と、期を追うごとに厳しくなっています (第一表―b参照)
 「過去三カ年の売上DI」 (第二表―b) をみると、「札幌」が二〇〇〇年にやや好転したものの二〇〇一年には再び悪化、過去三カ年で最悪になりました。「札幌以外」は、年を追うごとに悪化し二〇〇一年には大幅に悪化。「札幌」「札幌以外」を問わず二〇〇一年の悪化ぶりは際立っています。
 「業種別売上DI」 (第三表―b) では、三期を通して「運輸・倉庫業」のマイナス幅が最も大きく、「建設関連業」「卸売業」「製造業」がそれに続いています。とりわけ、「製造業」が「四〜六月期」マイナス一六・七、「七〜九月期」マイナス二八・六、「十〜十二月期」マイナス四六・三と期を追うごとにマイナス幅が大きくなっており注目されます。


二、「利益確保」がさらに困難に〜とりわけ「札幌」が厳しくなる〜

 「経常利益DI」 (第四表―b) をみると、全道で「四〜六月期」マイナス三〇・七、「七〜九月期」マイナス三四・四、「十〜十二月期」マイナス三九・三と期を追うごとに悪化しています。前年との比較では、「札幌」の悪化が各期とも目立ち、大都市札幌での過当競争がうかがわれます。
 「業種別経常利益DI」 (第五表―b) では、「建設関連業」「製造業」「運輸・倉庫業」「卸売業」の厳しさが目立ちます。前年との比較では、特に「製造業」が著しく悪化しています。
 長びく不況で売上げが減少し、過当競争と利益率の低下を招き、体力を急速に消耗しつつある中小企業の実態が痛いほど伝わってきます。消費減が生産の落ち込みにつながり、給与所得を減少させてさらに消費が落ち込むという悪循環の様相を呈してきました。

三、「景気はむしろ悪くなっている」が八〇%を越える〜経営者の景況感〜

 「景気の現状についてどう考えるか」 (第六表―a、b) との質問では、「景気はむしろ悪くなっている」と回答した企業が全道で八〇・三%にもなっています。とりわけ、小樽(九四・七%)、函館(九二・一%)が九〇%を越え、北網は八八・九%と九〇%に迫るなど、この三地域の経営環境の厳しさが目立っています。
 「景気はむしろ悪くなっている」と回答した企業の割合を業種別にみると、八〇%を越えているのは、「サービス業」(八六・八%)「運輸・倉庫業」(八六・七%)「卸売業」(八四・九%)の三業種となっており、景気低迷で企業が物流コスト、仕入コストなどのコスト削減にいっそう力を入れていることがうかがわれます。
 前年の当会の調査では、「景気はむしろ悪くなっている」と回答した企業の割合は、全道で三五・〇%でした。二〇〇一年には、八〇・三%と四五・三ポイントも増えており、不況はいっそう深刻になっています。

四、「販売価格・受注価格の下落」「売上不振」と「人材不足」に悩む中小企業〜地域・業種で若干の違いがあり〜

 「経営上の悩み」 (第七表―a、b) をみると、全道で第一位「販売価格・受注価格の下落」(二五・八%)、第二位「売上不振」(二五・五%)、第三位「あてになる人材不足」(十三・一%)となっています。売上不振や受注・販売価格の下落に歯止めをかけ、攻勢に転じたいと考えても、肝心の人材がいないという中小企業の厳しい現実を反映した結果となっています。また、「資金繰り、資金調達難」が五・八%と前年の二・七%(当会調べによる)より、倍以上増えており、気にかかります。
 地域別(第七表―a) にみると、「帯広」は「経費増加」(一三・六%)、「小樽」は「人材の不足」(一八・八%)が他地区に比較して多いなど、地域によってバラツキがあります。業種別 (第七表―b) でも、「小売業」は「経費増加」(一四・一%)、「サービス業」は「人材不足」(一六・五%)が多いなど、業種特有の悩みも見受けられます。

五、社員のレベルアップをはかり、営業力・商品力を強化し、売上げと利益率を伸ばす〜経営の重点方針〜

 「経営の重点方針」 (第八表)をみると、全道で「利益率を高める」(二九・六%)が前年より三・二ポイント高くなっており注目されます。とりわけ、「運輸・倉庫業」(四〇・八%)「小売業」(三五・三%)「サービス業」(三五・一%)が高くなっています。売上げがなかなか伸びない経営環境の下で、利益率を高めて経営を維持しようとする傾向がうかがわれます。
 「卸売業」「小売業」では、「社員のレベルアップをはかる」企業の割合が前年より大幅に増えています。一方、「建設関連業」「製造業」「運輸・倉庫業」では、「人員の削減」が前年よりかなり増えるなど、業種によって微妙な差があります。

六、地域経済と中小企業を支える金融システムと経済政策を

 「不良債権処理は、中小企業への波及を最小限にしてほしい」「担保だけでなく、企業の将来性を考慮した融資を」「天下りで再就職し、高額な給料、退職金を手にする方々はうらやましい。毎月資金難で大変です。とにかく、我々が必死で納めた税を無駄にしないで欲しい」「公共事業費の一〇%減は、末端の中小企業の受注額では三〇%減となる。急激な受注環境の変化は、せっかく育てた職員をリストラしなければならない苦しみがある」「運賃単価の下降に歯止めがきかず、ジリ貧の状態です。適正な価格に戻ることを願っています」「大手ゼネコン重視の発注を改め地方業者に受注機会を拡大し地域経済の活性化を」
 以上は、アンケートにしたためられた会員の切実な声です。雇用の場を確保し、地域経済を支えている中小企業の誠実な努力が報われ、平和で住民が安心して暮らせる政治が今こそ求められています。


※参考

○ 第2表-a 過去3ヵ年の「4〜12月」地域別売上動向
○ 第3表-a 2001年4〜12月の業種別売上動向
○ 第4表-a 2001年4〜12月の地域別経常利益動向
○ 第5表-a 2001年4〜12月の業種別経常利益動向
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